フォーラムのなかでセミョーノフ氏は、誰もがその名を聞いたことがある「チャットGPT」などの大規模言語モデル(LLM)発展のリスクについて語った。セミョーノフは講演で、LLMにどのような欠点があるのかを次のように説明する。
「LLMは常に大きな計算コストを浪費しています。LLMに推論はできず、推論を真似ることしかできないのです。それとは対象的に人間は、世界がどのように機能するかを理解し、自らの行動の結果を予測することができます。人間は目的を設定できます。皆さんのなかには明確な目的を持ってこの講演を聞きに来た人もいます。ではチャットGPTには目的があるでしょうか?全人類を奴隷にしようとでも?そんなまさか、目的を持っていないことは明白です」
では、AIが世界を征服し、人間の仕事を奪うことを恐れる必要があるのだろうか。スプートニク特派員はセミョーノフ氏に尋ねた。
スプートニク:AIが人間の職業を代替するようなことが将来起こるのでしょうか?もしくは、AIは人間の利用者がいなければ働くことができないのでしょうか?
セミョーノフ氏:私の考えでは現在、第四次産業革命が起こっています。第一次は蒸気機関、第二次はベルトコンベア、第三次はコンピュータでした。そして今、AIが適用された第四次産業革命です。いずれにせよこれは修正であり、何らかの職業が閉じられたり放棄されることはなく、何か新しいものに変化するのです。もちろん、AI使用に反対する人々も出てくるでしょうが、これまでの産業革命でみられたのと同じような現象です。
スプートニク:そうなると、私達には大きな変化が待ち受けているということでしょうか?
セミョーノフ氏:その通りです!でも、全てはAIを発展させている企業に大きく依存しています。このごろ複数のグローバル企業よって、AI分野の研究を全てストップするというイニシアチブが出されました。これはAIをどのように制御するか、全員がわかっているわけではないということに関連します。社会的責任はとても大きく、もし発展に明白な方向性を示したり体系化することがなければ、世界で後戻りのできないプロセスが始まってしまうかもしれません。
スプートニク:ハイテク分野のエキスパートら約1000人が、AI開発の停止を求める公開書簡に署名しました。これを聞き入れる人はいるのでしょうか?
セミョーノフ氏:これは紳士協定です。一部の企業にとっては、先を行く他の企業に追いつくチャンスと可能性になるでしょう。これを自らがこの分野を牽引していると見せつけるための、強力なPRストーリーとしている企業もあるでしょう。でも実際のところ、社会や法律、AI開発企業などの準備が整っていないため、開発を先に進める用意がないのです。そうでないなら、無理解のために禁止されることになります。規制をしようとする全ての委員会や評議会を後になってから撃退するより、むしろ彼らを先導するほうがいいでしょう。彼らは口にすることはありませんが、そうした意図を持っていると思います。