脱ドル化は困難なプロセス
ジュネーブ安全保障政策センターのアリ・アフマディ研究員によると、米国の制裁政策により、多くの国が他の通貨を用いた便利で手頃な支払い方法を見つける出すことに関心を持っている。しかし同氏によると、ドルからの脱却は困難なプロセスだという。これは、世界には長い間、共通の交換媒体として機能する単一通貨が存在したことに起因している。
「人民元は良い選択肢だが、人民元に対する最大の関心は中国との直接貿易にある。しかし、重要な問題は、中国における資本規制が人民元の兌換性や予測可能性を低下させていることなのだ」
ドルとの駆け引き
「中国は長年、人民銀行(中国の中央銀行)やロシア、ブラジルとのグローバルな戦略的パートナーシップを通じて、世界のドル化を戦略的に攻撃してきたが、フランスとともに欧州連合(EU)への道を切り開いた。中国は、初となる人民元建ての液化天然ガス(LNG)取引がフランスとの間で完了した」
ハルト氏によると、中国が実施する金融政策によって、人民元が前進する上で強い安定性がある。特に、中国人民銀行は2015年、市場原理を考慮する形で人民元の基本為替レートの計算式を変更した。
混じり合う効果
米国のシンクタンク「情報技術革新財団」のロバート・アトキンソン代表によると、ドル放棄には別の側面がある。
「一方では、ドルは基軸通貨であるため、この行為は米国政府の力を削ぐことになる。その一方で、脱ドル化は、ドルの価値は人為的に高められた水準から下落し、米国の輸出競争力を高め、年間1兆ドルに上る貿易赤字を削減できる。米国が多くの先端産業で中国と効果的に競争するためには、これは非常に重要だ」
「中国のドル」
米アメリカン・エンタープライズ研究所のシニアフェロー、デレク・シザーズ氏は、IMFのデータによると、過去10年間のドルのシェアは2022年末に58%まで低下し、この勢いは続いているとスプートニクに語っている。ただし、代替通貨が存在しないため、シェアが50%を下回るようになるのには約30年かかるという。
シザーズ氏は、2010年に人民元が対ドルで動き始めて以来、変動の平均値は6.8%未満であり、10%未満の変動にとどまっていると指摘した。
「これは、中国が人民元の自由な国外流出を認めていないため、その価値を判断するための追加のベンチマークが必要であるためだ。そのベンチマークがドルであり、人民元はドルの道具だ。各国が人民元をドルに 『置き換える』とき、ドルの一形態を別のものに置き換えているだけなのだ。中国が自由化するまでは、この状態が続くだろう」
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