「アメリカの愛国者」
ワシントンポスト紙は容疑者について、公式データとテシェイラ容疑者の知人の話を引用し、「21歳の第1級パイロットのジャック・テシェイラは愛国心に燃える人物で、家族にいる多くの軍人の例に倣い、入隊した」と書いている。
テイシェイラの入隊は4年前の2019年。米空軍はワシントンポスト空の取材に容疑者は「オーティス空軍州兵基地の第102偵察飛行隊のコンピューターと通信システムの管理とトラブルシューティングを担当した」と語っている。この問題に詳しい米国当局のある役人はワシントンポスト空の取材に、テイシェイラは軍事分野では経験に長けてはいなかったが、米国防総省のコンピューター・ネットワークの有名な「ジョイント・ワールドワイド・インテリジェンス・コミュニケーション・システム」を通じて、すでに高度な機密情報にアクセスできるようになっていたと語った。
「若者を啓蒙 国家安全保障を損ねるつもりはなかった」
テイシェイラ容疑者はチャットアプリのDiscordのサーバー上で国際紛争に関する政治的な議論に積極的に参加していた。友人がワシントンポストに語ったところによれば、容疑者はサーバーで「メンター」の役割を発揮していたという。2022年2月頃、テイシェイラは自身のサーバーで、自分が信頼する友人や若者らと秘密文書を共有するようになった。これはプロパガンダが横行する中で「政治を教える」ことが目的だった。信頼できるユーザーは、情報はサーバーの外には持ち出さないと誓ったと友人は語っている。
友人は、テイシェイラ容疑者には国家安全保障を損なうつもりはなく、むしろ、若者が大半を占めているサーバーのメンバーに「問題に対するよりよい視点を自分に唯一可能な方法で教えたい」と思っただけだと確信している。「彼はアメリカを愛していた。ただ、その将来には確信が持てなかった」と友人は語る。
一方、他のサーバーメンバーはワシントンポスト紙に、テイシェイラが人種差別的、反ユダヤ的な侮蔑発言を叫ぶビデオを見せている。テイシェイラ容疑者はまた、テキサス、アイダホ、ウェーコでの米国政府が行う「左翼狩り」の襲撃(編集:米国司法省が許可した左翼、特に無政府主義者を逮捕して国外追放する行為。いわゆるパーマー・レイド)にしばしば言及していた。そうした反面、先の友人の弁ではテイシェイラ容疑者はアイロニー好きで、他のサーバーユーザーにおもねることもあったという。テイシェイラ自身は敬虔なカトリック教徒でリバタリアン(完全自由主義)だったが、打ち明けた相手がまずかった。
CNNがテイシェイラ容疑者の同級生らへ取材したところによれば、容疑者は物静かで人付き合いもなく、彼の戦争や兵器への熱中ぶりは多くの人には「アメリカのナショナリズム」の発露と見られていたが、それは同時に「人を遠ざける」ものだった。
これからどうなる?
ニューヨーク・タイムズ紙によると、テイシェイラ容疑者には数十年の懲役刑が科される恐れがある。テイシェイラ容疑者はスパイ活動法により「米国の国防に関わる機密文書を無許可で押収、保持、譲渡」した罪で、公開した機密文書ごとに起訴されるものとみられている。ただし、ニューヨークタイムズ紙の報道では、どれだけの文書が公開されたかは不明。マサチューセッツ州検事局がスプートニクに語ったところによると、テイシェイラ容疑者の初公判は今日、4月14日にも行われる。
さらに、米国防総省のロイド・オースティン長官は、情報漏洩を避けるため、諜報情報へのアクセスをコントロールする手順の見直しを命じた。米下院情報特別委員会も容疑者がどのようにして資料にアクセスすることができたかについて、調査を開始する。
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