昨年、EUはウクライナ製品に対する輸入関税の1年間の撤廃を決定。陸上、河川を利用した交易ルートを開き、大量のウクライナ産農作物が欧州に流れ込むことになった。ウクライナ産農作物は世界市場に供給されると同時に、ウクライナの輸出を増やすことにつながると期待されていた。だが、実際には輸出されたものの多くはウクライナと国境を接するEU諸国に「定着」してしまい、結果的にこうした国で農作物の過剰供給や価格崩壊を生み出してしまった。
ウクライナの隣国ポーランドやハンガリーは15日、地元の農家らの反発を背景に、穀物や乳製品、野菜、肉などのウクライナ産農作物の輸入を禁止。スロバキアも19日から同様の措置を開始することを決めている。EUの政策執行機関である欧州委員会はこの決定を「受け入れられない」と反発している。
この状況についてロシアの南部連邦大学、世界経済国際関係学部のアシュヘン・ヤツェンコ准教授は、「EUはウクライナを支援したかったようだが、結果的に穀物の輸入拡大と価格低下を引き起こし、自らの問題をつくってしまった」と指摘。加盟各国が独自に一方的な禁輸措置を決定するのは至極当然のように思えるが、EU市場全体を統括する欧州委員会はこれを違法な措置とみなしていると説明する。
「欧州委員会はウクライナ産穀物に一方的な禁輸措置を取った国々に解除圧力をかけるだろうが、これはもはやウクライナ支援とロシアとの対決という政治的なものになっている。経済的要素は全くない。EUはウクライナ産農作物の物流コントロールを強化し、最初に想定されていたように欧州を経由して第三国に輸出されるようにするべきだろう」
これより前、EUに加盟するポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、スロバキアの首相らはウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長に対し、ウクライナ産穀物の流入による危機に介入するよう要請していた。
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