投機家で影の政府のメンバー
それ以降、金融投機はこのハンガリー出身の米投資家ソロス氏を語るうえで不可欠な要素となり、おそらく同氏の巨万の富の主な秘密でもあると思われる。すでに2010年代には、ソロス氏が為替詐欺に関して「ビルダーバーグ会議」の著名な参加者(特にロスチャイルド家)と共謀しているという説が浮上し始めた。ソロス氏はそのコネを利用して政府および民間のインサイダー情報にもアクセスできるとされる。
国境なきリベラルな世界
2004年、ソロス氏は正式に政界に参入したと言えるかもしれない。同氏は、特定の団体を支援して、ジョージ・W・ブッシュ氏の再選を阻止しようとした。またソロス氏は、米国のイラク侵攻に公の場で反対した。
それ以来、ソロス氏は米国および世界中で民主的かつ進歩的な改革を支援している団体に多額の寄付を続けている。同氏は、量刑を決定する際の人種を理由とする不平等を減らすことを目的とした米国の司法制度改革に多額の寄付をし、「有色人種の候補者」や米国への「非白人」移民の支援なども行った。
その後、ソロス氏が「不純な目的」のために、米国だけでなく世界の政治に影響を与えようとしているとの説が浮上した。同氏は国際的な助成財団「オープン・ソサエティ財団(ロシアは2015年、同財団を望ましくない組織に認定)」を設立し、1990年代初頭以降、世界各国、特に東欧でリベラルな価値観を広めてきた。しかし、祖国であるハンガリーでは、同国のオルバン首相がソロス氏について、ハンガリーの内政に干渉し、文化的伝統に反する「価値観」を植え付けたとして非難している。
ソロス氏は、著書『世界秩序の崩壊−「自分さえよければ」社会への警鐘』の中で、自分の世界観とその未来について非常に明確に述べている。同氏の主な目標は国境のない世界であり、そこでは誰もが平等で自由であり、民族宗教から性的少数者まで、あらゆる少数者の利益が単に法制化されるだけでなく、大多数の目から見てそれが優先事項として認められるようになることである。もう一つの「陰謀論」によると、ソロス氏は世界だけでなく人間の本質をも変えるという考えにとりつかれており、同氏の「慈善」活動の多くは、男女間の境界を消し去り、社会の平等を確立することを目的としている。つまり、それは世界的には「男女平等」と呼ばれているものだ。(つまり、人々が自由に選択し変更できる「社会的性別」間の平等のこと)
反ユダヤ主義のナチス
陰謀論者らのこの主張はばかげているように聞こえるかもしれないが、ハンガリー系ユダヤ人のジョージ・ソロス氏は、結局のところ幼少期にホロコーストを生き延びた。10歳の時、両親は息子をナチスから救うため、キリスト教徒の家庭に里子に出した。しかし、その養父自身がナチスの協力者であり、収容所に送られたユダヤ人の財産から利益を得ていたことが判明する。ソロス氏はその数年後に受けたインタビューで、自身が「観客」として存在していたこのエピソードが証券取引所でのゲームのようだったと指摘した上で、「もし私がこの金を受け取らなければ、他の誰かがそれを取りに来るだろう」と語っている。
一方でイスラエルは、ソロス氏が「ユダヤ国家を冒涜する組織」、つまりパレスチナ人支援やイスラエル軍の犯罪捜査のための補助金を支援していると繰り返し非難している。
しかし「左派」は、ソロス氏への攻撃は、ユダヤ人の世界征服とキリスト教世界の破壊の計画を記したとされる「シオン賢者の議定書」(注:この本の信憑性は証明されていない)の精神に基づいた反ユダヤ主義の真の現れであるとしている。