これらの発言は、実際には会談の中で別々の文脈で語られていた。「これほど上手くお金を使ったことはない」という発言は、2022年2月以降に米政権がウクライナに供与した380億ドル規模(約5兆3400億円)の軍事援助についてなされたものだった。
そして「ロシア人は死につつある」という発言も、確かにその会談の中でなされたもの。グラム氏は会談で、ウクライナ人の抵抗が「米国でのより良い自分たちを思い出させた。米国では最後の一人まで戦って、自由になるか死ぬか、という時代があった」と語った。これに対しゼレンスキー大統領は、「今、あなたは自由だ。そして私たちもそうなる」と答えた。それに対しグラム氏は、「そして、ロシア人は死につつある」と発言。するとゼレンスキー大統領は、「そうだが、ロシア人は我々の領土に来たのだ。我々はロシア人の領土で戦っているわけではない」と述べた。
ロシアでの反応
ロシアは、グラム氏のこの発言を無視しなかった。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「あのような上院議員がいることほど、国にとって大きな不名誉はないだろう」と発言し、グラム氏の発言は米国の名誉を傷つけるものだと指摘した。
一方、ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は、第35代米大統領ジョン・F・ケネディの弟で、大統領選挙中の1968年6月5日に負傷したロバート・ケネディ上院議員を例に挙げ、グラハム氏に米国の政治家が辿った「悲しい運命」を思い出すよう呼びかけた。メドベージェフ氏は、「グラム氏がそんなことを言っても無駄だ。同氏が愛する米国では、一般人が定期的に暗殺されているだけでなく、上院議員を暗殺するために汚い金が使われている」とテレグラムで述べている。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、テレビ局「ロシア1」の生放送で一般の米国人は自国の政府関係者がどんな発言をしているのか何も知らないため、すべての米国人が完全にロシア嫌悪を支持しているとは言えないと述べた。
また、ロシア連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストルイキン委員長は、グラム氏のロシア嫌悪的な発言について、刑事訴訟を起こすよう命じた。ロシア内務省は29日、グラム氏を指名手配した。