「先制攻撃の用意がある」米国、核兵器を刷新中

冷戦終結から30年が経過し、米国はトライアドの3つの要素すべての核兵器と運版手段を近代化する方針。米国の核政策の指針となる「核態勢の見直し(NPR: Nuclear Posture Review)」の最新版は2022年3月に承認され、同年10月に公表された。
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最新版NPRの承認に先立ち、核の先制不使用宣言を盛り込むかどうかをめぐって激しい議論が行われたが、最終的に含まれなかった。NPRではこれが、核兵器は米国だけでなく同盟国の安全を確保する上で基本的な役割を果たしているが、たとえ大量破壊兵器がなくても「潜在的な敵」が米国やその同盟国に多大な損失を与える可能性があると説明されている。なお、ロシアの軍事ドクトリンでは核兵器の先制不使用に関する規定は依然として揺るぎないものとなっている。

地上

NPRによると、近代化は米国の核のトライアド(三本柱)全体に及ぶ。まずは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だ。ロシアとは異なり米国には移動式ICBMシステムがない。保有しているのは、陸上ベースのICBM 「LGM-30ミニットマンⅢ」のみだ。1970年に配備されたミニットマンⅢは老朽化し、効果が失われ、米国の納税者の負担が大きすぎる。米国は、戦略的航空機とミサイル潜水艦を支持し、固定式地上配備の大陸間弾道ミサイルを放棄したいとさえ考えていたが、中国がこの核トライアドのつながりを発展させていることを知ると、考えを変えた。そして米国防総省は、2030年夏までにミニットマンⅢをノースロップ・グラマン社が開発している「LGM-35センチネル」に完全に置き換えることを決めた。
ロシア 大陸間弾道ミサイル「サルマト」の発射実験に成功

空中

NPRでは、2020年代末までに「B-52J」が戦略爆撃機の主力になると述べられている。「B-52J」には、ロールスロイス社製のF130エンジン、新しいレーダー、最新の通信設備やナビゲーション機器が装備される。また米国は、「B-52J」に極超音速ミサイル「AGM-183A ARRW」を搭載しようとしていたが、この計画はテストにおける一連の失敗によって中止となった。現在、別の選択肢が模索されている。米国防総省は「B-2ステルス」をノースロップ・グラマン社の「B-21レイダー」に置き換えたい考え。「B-21レイダー」は世界初の第6世代航空機として位置づけられているが、ロシアの軍事専門家らは「B-21レイダー」について、前世代と比べて爆弾などの搭載量が減少していると指摘している。

海中

現在、米国が運用可能な核兵器の70%が戦略潜水艦に搭載されている。NPRによると、現行のオハイオ級潜水艦は、3段式潜水艦発射弾道ミサイル「UGM-133Aトライデント Ⅱ」を搭載する潜水艦「コロンビア」に置き換えられる。2031年から米海軍には毎年1隻の「コロンビア」が納入される予定。運用期間は42年とされている。オハイオ級潜水艦とは異なり、「コロンビア」は原子炉への燃料の再装填が必要ない。米国は、2030年代初頭までに核トライアドのすべてのつながりが完全に刷新されることを期待しており、それほど急ぐ理由として、ロシアと中国の脅威の高まりを挙げている。なお、ロシアも中国も、そして地球上のどの国も、米国のように大量破壊兵器に資金を費やしていない。
政治専門の週刊誌「ディフェンス・ニュース」は先に、ロシアの最新の大陸弾道弾ミサイルRS-28(サルマト)の実験成功について、米国は核三原則の刷新の重要性を突き付けられたと報じた。
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