カンボジアは1970年代の内戦に伴い、米国の侵攻を受けた。人権団体「地雷クラスター爆弾モニター」によると、米国は当時、カンボジア東部を中心に8万発のクラスター爆弾を投下した。散りばめられた子弾は2600万発に上った。
当時のクラスター爆弾の不発率が約30パーセントであることを考慮すると、およそ780万発が不発弾としてカンボジアの大地に残った計算になる。半世紀以上経った現在でも、対人地雷とともに民間人に危険をもたらしている。
フン・セン首相は9日、SNS「ツイッター」上の公式アカウントで、こうしたカンボジアの歴史を「苦い過去」と振り返り、次のように投稿している。
「供与が本当であれば、ウクライナ人にこの先10年、100年にわたって危険をもたらすだろう。私はウクライナ人への憐れみから、米国とウクライナの大統領に対し、爆弾を使用しないよう強く求める。本当の犠牲者になるのはウクライナ人だからだ」
米同盟国も不支持
米国政府は7日、ウクライナにクラスター爆弾を供与すると発表した。これまでに米ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ウクライナは供与するクラスター爆弾を「ロシア領の攻撃や人口密集地では使用しない」と保証したと明かしている。だが、ウクライナは2014年以降、住宅地に対しても度々クラスター爆弾を使用しているほか、自国での使用を条件に供与された西側兵器でロシアへ越境攻撃するなど、その約束は信用するに値しない。
米国、ウクライナ、ロシアはいずれもクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)の締結国ではないが、殺傷能力が高く民間人に大きな危険をもたらすこの爆弾を米国が供与することは、紛争のエスカレーションにつながる冒険的行動だ。露外務省のマリア・ザハロワ報道官は、米国は「ロシアとウクライナの子どもたちを含む、爆発で死亡した人々に対する責任を持つことになる」と声明を発表している。
今回の供与決定には、条約に参加している米国の同盟国からも消極的ではあるが不支持の声があがる。
共同通信によると、英国のリシー・スナク首相は、米国への直接批判を避けながら「英国はオスロ条約に加盟している」としてクラスター爆弾の供与に反対の姿勢をほのめかした。イタリアのジョルジャ・メローニ首相も「条約の普遍的な適用を望む」。スペインのマルガリータ・ロブレス国防相も「この爆弾ではウクライナの正当防衛は実現できない」と述べている。
また、同じく条約の締結国である日本の松野博一官房長官は10日、「米国とウクライナの2国間のやりとりであり、コメントは差し控える」としたうえで、「多くの国が条約を締結することが重要との考えのもと、引き続き非締約国に働きかけを行っていく」と発言。米国の手前、反対の姿勢は示さなかったが、積極的な支持も表明しなかった。
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