研究者らは前頭側頭葉変性症の689人の患者の記録を分析した結果、全体の2.5%にあたる17人に罹患の初期段階で視覚芸術の急激な成長が見られたことに気づいた。こうした患者らの脳を、同じく前頭側頭葉変性症を病みながらも創造的な才能は発揮していない患者と健康な人のグループの人たちの脳と比較した。
その結果、研究者らは言語と行動に関する部位の脳の劣化に伴い、脳の他の部位は刺激を受け、創造的な才能が突如として目覚めるという帰結を結んだ。同時に創造性が爆発した17人の患者のうち8人は、それまで一切、創造的な才能を持っておらず、別の7人は、視覚的または非視覚的な芸術に何らかの関心を持っており、2人は芸術家として認められていたが、作風が大きく変化していた。
おもしろいことに、右手の動きを司る脳の領域と、創造的能力を持つ患者の創造性を支える視覚処理領域との間には、独特の構造的関係があることも確認されている。この特徴は、神経可塑性、つまり新しい結合を形成したり自己組織化したりする脳の能力を示している可能性がある。これらのメカニズムの解明は前頭側頭葉変性症と闘うための新たな方法の基礎となる可能性がある。
関連ニュース