そもそもどんな鉱物?
ガリウム
半導体や太陽電池などの製造に欠かせない鉱物。半導体はパソコンやスマホ、家電製品など民生品用のものから、ドローンやミサイルなど、軍事転用可能なものまで様々だ。経済産業省などのデータによると、2020年時点でガリウム地金の世界供給量(263トン)のうち、93.9パーセント(%)を中国が占めている。
日本は世界市場のガリウム輸入の3~4割を占める大口消費者で、輸入の約75%を中国に依存している。一方、日本でも秋田県にガリウム鉱床があり、年間10トンほどの生産能力があるといわれている。だが、コスト面が主な要因で実際には3トンほどしか生産しておらず、あとは輸入に頼っている。
ゲルマニウム
光ファイバーや赤外線光学関連などのハイテク機器の製造に利用されている。2019年時点で世界供給は130トン。そのうち中国が85トン(65%)を占めている。
日本は2020年、関連製品も含め約23トン輸入している。金属ゲルマニウム、関連製品の合計では70~85%(6トン)を中国に頼る。一方、酸化ゲルマニウムはカナダからの輸入が75%(12トン)を占める。酸化ゲルマニウムは国内でも多少生産しているが、金属ゲルマニウムに関しては中国、ロシア、米国からの輸入に頼るしかない状況となっている。
輸出禁止ではない
中国商務省は7月初旬、ガリウムとゲルマニウムの輸出規制を導入すると発表した。同省の束珏婷(シュ・ジュエティン)報道官は、これらレアメタル2種には「軍事・民間目的の両方の二重用途特性」があり、「国家安全保障と国際的義務の履行の観点から、ガリウムとゲルマニウムの合法的な使用を保証」するため、輸出を許可制にすると説明した。
一方、「輸出規制は輸出禁止ではない」とも強調。中国当局のルールに即して許可を得れば、これらレアメタルの輸出は可能だとした。また、この措置は「特定の国に向けられたものではない」と主張している。
日本の対応
産経新聞によると、日本の西村康稔経済産業相は1日、中国の輸出規制による日本企業への影響について「即座に出るものではない」との考えを示した。また、「世界貿易機関(WTO)のルールに照らし、不当な措置があれば適切に対応する」とした。
これまでの各国報道で中国がレアメタル2種の輸出を禁止したとの情報はみられない。だが、中国がその気になれば世界供給の6~9割をストップすることは、理論上可能となっている。
仮に禁輸されても完全になくなることはないものの、市場供給量が大幅に減少し価格は高騰する。そうなれば半導体が使用されている携帯電話やコンピュータ、家電製品など身の回りの機器に値上げにもつながる。日本やその他の西側諸国は、レアメタルの安定供給のため代替調達先の確保や国内生産の強化を迫られることになるだろう。