デジタル通貨とは
現在広く使われている電子マネーが法定通貨の代替であるのに対し、CBDCは法定通貨自体をデジタル化したものになる。デジタル円の1円は現金や電子マネーの1円と同等の価値を持ち、決済や送金、貯蓄など従来通貨と同じように使える。
暗号通貨との最大の違いは、中央銀行が発行・管理することで信用が裏付けられていることで、暗号通貨ほどの価格変動はない。将来的には国際送金手段としても活用が見込まれる。また、中銀や政府の為替介入も可能となっている。
各国によって細かなシステムは異なる場合があるが、デジタル通貨は基本的には中央銀行のプラットフォーム上に開設される口座「デジタルウォレット」に保管される。送金手数料が安い、不正取引の防止、銀行破綻時の資産保全などメリットも多いものの、サイバー攻撃や自然災害に対する脆弱性、プライバシー保護の問題など、一定のリスクもある。
すでに導入済みの国も
ロシアでは7月24日、ウラジーミル・プーチン大統領がデジタルルーブル導入法に署名した。デジタルルーブルは現金、キャッシュレスルーブルと並んで、ロシアの第3の通貨形態となる。導入法は2023年8月1日に施行される。本格的な導入開始は2025年初頭からとなる見込み。
「CBDCトラッカー」などのデータによると、現時点でデジタル通貨がすでに導入されているのはナイジェリア、ジャマイカ、バハマのほか、グレナダやセントルシアなど8カ国・地域が参加する東カリブ通貨同盟となっている。
一方、正式導入はまだだが本格的な実証実験を行っているのは中国、インド、ガーナ、ウルグアイなどの少なくとも4カ国。このなかで最も進んでいるとされるのは中国で、指定都市での導入が進んでいる。これまでに1億2000万の「デジタル・ウォレット」が開設され、1.8兆デジタル人民元の取引が行われたという。
ブラジル、香港、イラン、トルコ、スウェーデン、韓国など17カ国は技術実験を行っている。このほか、米国、欧州連合(EU)、ベトナム、エジプト、インドネシア、アラブ首長国連邦、南アフリカなど50カ国がデジタル通貨の導入の是非を検討している状態となっている。
日本メディアのこれまでの報道によると、日本は導入の是非を判断していないが、制度設計に向けた動きは着々と進んでいる。日銀は3月までに技術検証を終えていて、4月から実証実験の段階に入っている。財務省は有識者会議を立ち上げ、7月には実験に参加する企業60社も公表している。
各国で分かれる対応
一方で、デジタル通貨の導入計画を凍結したり、始めから検討すらしていない国も一定数ある。デンマーク、ケニア、シンガポール、フィリピン、フィンランド、エクアドルなどはデジタル通貨をあえて導入しない方針をとっている。
これまでにデンマークは、デジタル通貨導入による潜在的なメリットより、これによって起こる問題のほうが大きいと指摘している。また、ケニアは決済における課題は別の技術革新でも対応可能なため、デジタル通貨開発は優先事項ではないとしている。