ロシア人東洋学者のセルゲイ・ルコニン氏は、中国の購買担当者景気指数が落ちているのは偶然ではないと見ている。中国経済には様々なシステム上の問題点が蓄積されてしまっている。その1つ、実業界の債務は中国のGDPの295%にまで達しており、就労可能人口の占める割合も前代未聞のレベルまで縮小したのに加え、台湾周辺の地政学的リスクもある。ルコニン氏は、軍需品の生産拡大は国民の需要や収入増にはほぼ反映されないと強調している。
中国の購買担当者景気指数の伸びが鈍化すれば、台湾、ベトナム、韓国、日本と、アジア諸国全体に影響が出ないわけにはいかない。しかも日本と韓国の購買担当者景気指数には、人口の老齢化と労働資源の縮小という人口動態がさらに抑制をかけている。ルコニン氏は、これを横目にインド、インドネシアでは、爆発的な人口増加が商品需要を拡大させているものの、ロシアには中国とアジアの景気指数の鈍化は全体で見た場合、輸出収益の削減という形で現れるだろうと指摘している。
ルコニン氏の出した帰結は統計データを完全に確証している。日本の購買担当者景気指数は中国と同様、50ポイント以下にとどまっている。ただし、中国の産業の景気指数が極端な鈍化を示しながらも、なおやはり上昇しているのに対して、日本の7月のPMIは、auじぶん銀行の評価では前月の6月の49.8ポイントから49.6ポイントに下がった。同銀行は落ち込みの原因のひとつには輸出の不振があると見ている。日本製品の海外での販売は17カ月連続で縮小の一途をたどっている。
お隣の韓国も同じく、PMIは分水嶺の50ポイントより低く、この状態をすでに13カ月連続で囲っている。ただし、日本とは異なり、韓国の産業界ではわずかではあるものの、景気指数には上昇が認められる。
米金融サービス企業S&P グローバルの見解では、一番きつい状況にあるのは台湾で、2023年7月のPMIは0.7ポイント減少している。これは台湾の製造業セクターの消費者需要が間断なく減少しているためだ。
S&P グローバルは、アジア諸国で製造業セクターの伸びが鈍化している国にベトナムを加えた。PMIは多少の伸びを見せているものの、ベトナムの企業の7月の売れ残り商品の在庫が増大したことがその原因だ。
そのかわり、インドネシアでは製造業セクターの景気指数は、S&P グローバルによれば、23カ月連続で拡大し続けている国内需要のおかげで伸びている。
S&P グローバルのPMI評価が以前と変わらず高いのはインドで、この国の製造業の景気は拡大の一途をたどる国内需要に揺るぎなく支えられている。
スプートニクは前日、中国では年金暮らしの親が、自分たちの面倒をみてもらうために子どもに給料を支払うという、若者向けの新たな仕事斡旋の傾向が勢意を増していると報じている。
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