スタートは首尾よし
ロシアの月面探査機「ルナ25号」 の打ち上げはモスクワ時間11日午前2時11分(現地時間、日本時間ともに午前8時11分)に行われ、9分後に地球の周回軌道に投入された。ルナ25号の月までの旅路は約5日間を予定。途中、1日半が経った時点と月の周回軌道投入の1日前の2回、ルート修正が行われる。月面着陸は予定では8月21日。これが成功すれば、複雑な地形をしている月の南極に軟着陸を成功させた初のステーションとなる。特筆すべきなのは、南極への着地を目指してもう何年も宇宙先進国らがしのぎを削っているが、結局は、軌道からのアプローチと言う点ではより着陸しやすい赤道付近にしか着地は行われていない点である。
前回のソ連時代の「ルナ24号」の月面着地は1976年。その際、「ルナ24号」は170グラムの月の土壌を地球に持ち帰った。研究者らは土壌サンプルの詳細な調査から、月の土壌には0.1%の割合で水が含まれている可能性があるという帰結にたどり着いている。
目的に向かって
ロシアの「ルナ25号」は主に以下のような学術的・科学技術的任務を担っている。
月の極圏の物質に含まれる水と揮発性化合物の探索、極レゴリスの表面と上層の元素組成と同位体組成の研究
太陽風とレゴリス上層との相互作用を含む、月表面近傍の外気圏のプラズマおよびダスト成分の研究
搭載機器および研究用機器群の1年間の運用を保障するために、月面での作業技術と、探査機が月の深夜を持ちこたえるための2つの技術を構築する
特に第2項目の研究の重要性は、何十億年もの間、宇宙のさまざまな「部分」の隕石が月に衝突してきたことにある。もしその粒子が見つかれば、人類は比類ない発見をすることになる。
復興するロシアの月探査
ミッションの意義についてスプートニクが、「ロスコスモス・メディア」社のイーゴリ・アファナーシエフ学術編集者に尋ねると、アファナーシエフ氏は「ルナ25号」が新生ロシアの歴史では初のステーション打ち上げであることに注意を喚起した。アファナーシエフ氏は、47年前に打ち上げられた「ルナ24号」に比べ、今回の「ルナ25号」は大きさは2分の1とコンパクトでありながら、21世紀の要請に答えられるよう、技術面ではより進んでいると語っている。
アファナーシエフ氏は技術面では諸外国の月探査機と同列に並びうるとしながらも、一つ大きく異なる、重要な点があるとして次のように語っている。
「ロシアのステーションは『オールインワン』のコンセプトに合致しています。月へは1つのコンポーネントで飛び立ち、月の軌道へと出て、着地します。インドの月探査機『チャンドラヤーン3号』は8月8日に月の軌道に出ましたが、これはフライトモジュール、着地モジュール、月面探査機の3つから成り立っています。類似している中国の『嫦娥3号』は着地モジュールとローバーの2つから成り立っています」
月で水を探す なぜこれが重要なのか
ロシア連邦宇宙政治学研究所のイヴァン・モイセーエフ所長はスプートニクからの取材に、地球の文明の目前には月面での基地建設という世界規模的な課題が立ちはだかっており、その経済的、学術的重要性は全世界が認めているとして、次のように語っている。
「月の経済的な重要性は増しています。それはなぜか? 宇宙空間で飛行を続けるには燃料が要りますが、この水が水素と酸素に分離することで最高のロケット燃料源となります。宇宙に水を打ち上げるのは非常に高額につく。それは上昇するだけでも莫大な量の燃料を浪費するからです。でも地球からではなく、月から水を採取すれば高くはありません。ですから将来、2050年以降は月の極圏に横たわる氷を掘り起こす作業が開始されることになっています」
モイセーエフ氏は、月の極圏での水探査の重要性は月の地形に関係があると説明している。月の中緯度付近は太陽の影響から水は表面や、その近くには存在できないが、極地はクレーターがあり、太陽から遠く、温度は0度か、それ以下であるため、氷が維持されている可能性がある。
「このように、今日全ての注目は月の南極に集中しています。目的は現段階では接近し、そこに何があるのかを見るという調査的なものです」