【解説】米国にレーザー兵器はあるか?

レーザー兵器の開発に取り組んでいるのはアメリカとロシアだけではない。軍事用レーザーの実験は日本も他の国もを発表している。これらの「死の光線」は戦争の方法とルールを劇的に変えることは間違いない。スプートニクは、米国が運用可能なレーザー兵器をすでに保有しているのか、それはどういった兵器なのか、実態を探った。
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1961年、米軍の請負を行っているヒューズ・エアクラフト社は、光放射を発生できる新しい装置を発表した。米国防総省は、レーザーを兵器に応用した場合の大きな可能性にすぐに気づいた。レーザー光線は光速で伝播するため、敵はスコープに捉えた瞬間、すでに命中していることになるからだ。誘導システム自体は安全な場所の複合施設に設置されるため、レーザーで撃つ場合のコストは、ショットに使われるエネルギーのコストだけということになる。ニューアトラス誌が引用した専門家の試算では、メガワットのレーザーのショットコストはほぼ1ドル。比較のために記すと、米パトリオットミサイルは1発だけで400万ドルかかる。
米国人科学者たちの努力と米国防総省がレーザー兵器開発に投じた莫大な資金は決して無駄ではなかった。2002年、米国はイスラエルとともに、モバイル戦術高エネルギー・レーザー計画の一環として、レーザー装置の助けを借りて高速で移動するミサイル砲の迎撃に成功した。また2004年には、ボーイング747の改造機に搭載したABL(空中発射レーザー)の酸素-ヨウ素化学レーザーが標的ミサイルの迎撃に成功し、空中レーザーシステムの潜在性を実証した。
The Boeing YAL-1 USAF Airborne Laser (ABL)
2014年、米海軍は海上の小規模の標的を攻撃できるレーザー兵器システム(LaWS)を揚陸艦ポンセに配備。これが大きな節目となった。
AN/SEQ-3 Laser Weapon System (LaWS)
2017年、ロッキード・マーティン社の戦闘レーザー「Advanced Test High Energy Asset(先進試験用高エネルギー・アセット)」は、複数のドローンを同時に撃墜する能力の実証に成功した。
米国、対ドローン用レーザー短距離防空システムの試験実施

米国のレーザー兵器 その仕組み

スプートニクが入手した米議会調査局の2018年の報告書によると、米軍の戦闘用レーザーには、光エネルギーを放出する高エネルギーレーザー(HEL)と、電波を放出する高出力マイクロ波(HPM)の2種類がある。
高エネルギーレーザーのタスクは、光速で移動する強力なエネルギーの集中ビームで敵の標的を無力化または破壊し、自陣を防衛することにある。標的に命中すると、レーザービームは熱を発生し、これが標的を溶解、燃焼、あるいは蒸発させる。高エネルギーレーザーはミサイル防衛、対ドローン戦、敵航空機や地上車両の撃破など、さまざまな軍事シナリオで使用されている。特徴は超高精度と高速性で、電源さえあれば事実上、無限に弾薬の供給ができる。
高出力マイクロ波兵器システムは、無線周波数帯とマイクロ波周波数帯の広い範囲で電磁放射を発生させる。主な目的は敵の電子システムを抑制することだが、それとは別に、敵の歩兵に危害は与えずに不快感を起こさせ、兵士の動きを抑制するというタスクもある。高出力マイクロ波も波動を出すが、光波ではなく、電磁波であるために目には見えない。電磁波は衣服を透過し、皮膚に火照った感覚を与える。開発者は日焼けによる皮膚がんのような発がん性はないと保証している。
戦闘用レーザーは地雷除去にも用いることができる。この目的で米国は、家電の標準的な電子レンジの10億倍もの電磁パルスを発するマックスパワー・システムを開発した。このパルスは、遠く離れた爆発物を爆轟させることができる。
Air Force Research Laboratory MAX POWER
米国はすでにいくつかの戦闘用レーザー・システムを実用化しており、この次世代兵器の改良のために支出を増やし続けているのは明らかだ。例えば米軍は、接近する飛翔体やドローンの脅威に対する360度の統合防御にレーザー兵器を使用しようとしている。さらに、戦闘用レーザーは、敵の車両だけでなく、その人員も無力化または殲滅することができる。米行政府の公式的な声明では、米国はレーザー戦闘兵器を装備した部隊の展開を2035年までに開始する。
スプートニクは、米国の人工衛星を目つぶしできるレーザー兵器を中国が保有すると報じている。
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