プログラム「ベスビオ・チャレンジ」
2023年3月、ケンタッキー大学のAI科学者であるブレント・シールズ教授と彼の仲間たちは、焼けた巻物の研究を加速させるために「ベスビオ・チャレンジ」プログラムを立ち上げた。解読可能な単語を探し出した参加者には賞金が与えられることになった。
この課題を達成するため、学者たちは巻物2冊とパピルス断片3点の3次元X線画像を何千枚も公開した。また、古代のインクがパピルスの構造に与えた微妙な変化に基づいて、巻物の文字を読むように訓練された人工知能プログラムも公開した。
現在、パリのフランス学士院に所蔵されているこの巻物は、元々は裕福なローマの役人(彼はおそらくユリウス・カエサルの義父とされている)、ルキウス・カルプルニウス・ピソン・カエソニヌスの別荘の図書館で発見された。
最初の成功
米国ネブラスカ州の学生、ルーク・ファリターとドイツ・ベルリンの学生ユセフ・ネーダーの2人がプログラムに参加し、検索プロセスを改良した。その結果、2人は巻物の1つで「紫」を意味する「πορφύραc(ポルフォロス)」という同じ古代ギリシャ語を偶然発見した。この単語を最初に見つけたファリターが4万ドル、ネーダーが1万ドルを獲得した。
「πορφύραc(ポルフォロス)」という古代ギリシャ語
© 写真 : Vesuvius Challenge
「この単語は、この古代の巻物の謎に飛び込む第一歩です。ここから言葉を読み取ることは、我々にとって、月に足を踏み入れるようなものです」
今では巻物の全文を最初に解読する競争が始まっている。ナポリにあるフレデリック2世ナポリ大学のパピロス研究者、フェデリカ・ニコラルディ博士によれば、現在、巻物の3行ぶん、10文字までが読めるようになっており、将来的にはさらに多くの文字が読めるようになるという。
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