慢性炎症はどのようにして起こるのか?
ボルコフ氏によると、免疫システムは病原体に直面すると防御のためにそのすべての細胞を動員する。そして炎症が起こり、その過程で「敵」を排除する。これは急性炎症と呼ばれ、その期間は一般的に6週未満。一方、炎症サイクルは終了するのではなく、より弱い形ではあるが、継続することもあるという。ボルコフ氏は、このような状態は慢性炎症と呼ばれ、主に高齢者に起こりやすと強調している。
なぜ慢性炎症が老化を促進するのか
ゆっくりと進行する慢性炎症は免疫細胞を弱らせ、体内の異物や炎症因子の排除ができなくなり、骨格筋量の減少や、筋機能の低下を引き起こすおそれがある。慢性炎症は幹細胞の自己複製も妨げ、老化を著しく加速させる。脳内における慢性炎症の発生は認知機能を低下させ、アルツハイマー病やパーキンソン病などの中枢神経系の障害を引き起こすとボルコフ氏は語っている。慢性炎症の脅威を取り除くことによって、人は実際に老化プロセスを遅らせることができるという。
慢性炎症の対処法
米国の研究チームが、慢性炎症の対処法の1つを提案している。彼らは、カルシウム不足によって慢性炎症が生じることを発見した。体がカルシウムを吸収する能力は年齢を重ねるとともに低下することが判明した。そのため研究チームは、特別に開発された医薬品の助けを借りてカルシウム不足を補うことを提案した。米国の研究チームによると、必要な量のカルシウムを補う抗老化薬は、重要なすべての臓器の老化を遅らせることが可能だという。
別の多くの研究では、慢性炎症の他の原因が明らかにされている。例えば、人間の老化した細胞や組織の炎症は、タンパク質STINGをブロックすることで抑制できるという。
また、サンクトペテルブルク国立大学のロシア人研究者ナタリア・ガブリロワ氏は、予防策を推奨している。同氏は、脂肪組織が過剰に蓄積した状態は重度の炎症を引き起こすため、まずは脂肪組織を減らすことをはじめとした健康的なライフスタイルが、炎症過程の制御に役立つと考えている。同氏によると、腸内フローラが炎症の発生に重要な役割を果たしている。そこではたくさんの細菌が生息しており、そこに含まれる乳酸菌とビフィズス菌は炎症を効果的に軽減するという。ガブリロワ氏はまた、質の高い睡眠や運動の重要性を指摘している。
これより先、ロシアの学者たちが老化を遅らせることのできる物質の合成に成功したと報じられた。
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