慎重と敬遠
日本政府は無条件でイスラエルを支持するという米国の政策から離れ、バランスを取ろうとしていると、ロシア科学アカデミー、中国・現代アジア研究所、日本研究センターのヴァレリー・キスタノフ所長は語る。
「日本は中東においては旧来の方針を堅持しています。アラブ、イスラエルのどちらの側にも積極的に支援せず、できる限り中立でいるという立場です。なぜなら日本は、アラブ諸国が親イスラエルの西側諸国に石油禁輸措置をとった1973年の石油危機をまだ忘れていないからです。当時、中東石油への依存度は80%だったため、日本は本当にパニックに陥りました。ところが、今ではそれは90%を超えています。もし今、日本がアラブ諸国を敵に回せば、日本経済にとって大惨事になりかねません。日本にとって、いかなる中東紛争であっても、それへの関与は生存に関わる問題なんです」
10月18日の国連安全保障理事会のガザ地区「一時停戦」決議に、米国が阻止するなか、日本が賛成した理由はひとつにはここにある。
日本が恐れる紛争の拡大
ロシア科学アカデミー、東洋学研究所のドミトリー・モシャコフ教授(史学博士)も、日本はこの紛争解決でリーダーシップをとる準備ができていないと考えている。
「この紛争はアラブ世界にとって非常に重要です。 日本政府はアラブ人に同情し、紛争終結のためのいかなる合理的な提案も支持する姿勢を示すことで、紛争への関与を示しています。 ただ、日本はこのプロセスで片方の当事者のみを支持しながら主導権を握ることは明らかに志向していません。 日本の主な懸念は、紛争拡大で中東からの原材料の供給が脅かされることにあります。 イスラエル国防軍は中東のあらゆる目標を攻撃する用意があると宣言しているからです。 この地域からのエネルギー供給に混乱が生じた場合、中国はいつでもロシアに方向転換することができますが、現況で日本にはそのような選択肢は与えられていません」
つまり、日本の外務大臣がイスラエルとヨルダンを訪問した主な成果は、紛争の人道的停止に関する非常に慎重で控えめな声明だけであり、それ以上のものではなかったが、人道的停止への希望もまた、大きくはなかった。
イスラエルは人質全員の解放まで人道的停止を認めないとしている。モシャコフ氏は、これはイスラエルの厳格な姿勢であり、今後も変わることはないだろうと見ている。したがって、今回の訪問は形式的なものでしかない。
日本の外交は紛争終結にむけた大きな原動力にはならない、しかし日本が受けるであろうリスクは日々増大している。
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