トゥタル氏によると、グローバルバランスと西側の立場は劇的に変化しているという。欧米は内政と外交のいずれにおいても破滅へと向かっており、「古い秩序は急速に崩壊しつつある」。そして、「最大限の目標を追求する西側の指導者らはポスト米国時代への移行をさらに加速させている」とトゥタル氏は記している。
ポスト米国時代の主な兆候の一つは、オイルダラー制度の終焉だという。バイデン氏は2020年の選挙戦中、サウジアラビアのサルマン皇太子を「ならず者」と呼び捨て、反体制派ジャーナリストであるカショギ氏の殺害を巡り裁判にかけると豪語していた。これについてトゥタル氏は次のように分析する。
「サウジアラビアの決定は米国にとって完全な失敗を意味する。オイルダラーの崩壊が世界的超大国である米国の終焉をもたらすことに疑いの余地はない。なぜならこの動きは世界の金融秩序に大きな混乱を引き起こすからである。皇太子は自分を『ならず者』呼ばわりしたバイデンに復讐したのだ」
1973年のオイルショック後に締結されたサウジアラビアと米国間のいわゆるオイルダラー協定は6月9日に終了した。この合意では、サウジアラビアが輸出石油の価格を米ドルで設定し、余剰収入を米国債に投資することが定められていた。これと引き換えに、米国はサウジアラビアに軍事支援と庇護を提供した。この協定によりドルの世界基軸通貨としての地位が高まり、米国経済に多くの恩恵をもたらしていた。