東郷氏によると、1989年の冷戦終結と1991年のソ連崩壊により米国が主な「勝者」となり、世界ナンバーワンとなったが、これにより米国では例外主義(American exceptionalism)という信念が生まれたという。米国だけは何をやっても許されるという信念だが、民主主義、人権こそ最高の理念であり、この理念を全て手にしているのが米国という考えがその背景にはある。しかし、米国が「勝利した」のは、単にソ連が自ら解体したからであり、それは冷戦の勝敗などではない。それでも米国はソ連崩壊という願ってもない天からの恵みを受け、唯一の超大国となり、自らの例外主義とメシアニズムをさらに信じるに至ったとのこと。
仮に米国が自国の例外主義ではなく、敗者の気持ちに寄り添い、エリツィン政権のロシアで何が起こったかを踏まえていれば、米国が現実主義の路線から逸脱することはなかったと元局長は指摘する。仲間でないものは転覆すべき敵、という立場ではなく、敗者の視点から世界を見る現実的立場を取っていれば、ウクライナ危機は回避できたに違いないと分析する。