米国の「カール・ビンソン」には、8つの飛行隊で構成される第2空母航空団(CVW-2)が乗艦している。そこには4つの戦闘攻撃飛行隊が含まれており、合わせて最大60機の戦闘機を運用している。フランスの「シャルル・ド・ゴール」には、ラファールM戦闘機24機が搭載されている。日本の「かが」には、通常通り戦闘機は搭載されていない。
中国人民解放軍海軍のフリゲート艦「大理」(553)が訓練を監視している。
空母グループの連携
欧州の空母が参加する訓練は今回が初めてではない。 2024年にはイタリアの空母「ITSカヴール」(CVH-550)が米国の空母「USSエイブラハム・リンカーン」(CVN-72)とともに同様の訓練に参加した。一方、今回の訓練は参加国がやや拡大し、日本の海上自衛隊の艦艇が初めて参加している。フランス海軍士官の発言から判断すると、今回の訓練は可能な限り現実的かつ実践に近い状況で行われるとみられる。
訓練の目的は、飛行隊のために空母の一定の互換性を確保し、ある空母の飛行隊が別の空母から発艦できるようにすることにあるようだ。そこには、航空機の種類やナビゲーションシステムの違いに関連したかなり深刻な問題がある。
たとえば、F-35CやF/A-18F、ラファールMは制動装置を搭載したあらゆる空母に着艦できる。一方、最終進入を成功させることは、特に空母が異なる艦隊に所属し、それらの艦隊では指令が異なり、異なる航法装置が使用されている場合、それほど簡単なことではない。
独自の航空団を持たない日本の「かが」が訓練で果たす役割は興味深い。これを単なるパフォーマンスとみなさないのであれば、「かが」は、例えば、その甲板に着艦できるF-35Bを保有する米海兵隊から「借用」した飛行隊を使用すると推測することができる。あるいは、「かが」が無人機などの使用訓練を行うという可能性も十分にあり得る。偵察用や攻撃用のさまざまな無人機や無人艇の活用は、海軍の作戦においてきわめて重要になりつつある。
互いに非常に離れた海上に位置する3つの空母グループの連携が図られ、その過程で航空部隊の機動訓練が実施されている可能性がある。集中攻撃、分散攻撃、仮想敵に対する攻撃、パトロール、長射程の空対空ミサイルの発射とそれに関連するサポート、航空攻撃や船舶に対する攻撃の撃退などだ。今回、「かが」が無人機などを活用しているとしたら、全ての参加部隊の利益のために偵察を行っていることになる。
スプラトリー諸島をめぐる戦争?
このような訓練が初めてではないならば、今回の訓練の政治的意味はどこにあるのだろうか?
マレーシアやフィリピンなどの近隣諸国との協力が計画されていることや、フランスがベトナムと訓練を行うとの情報もあることから、何らかの政治的意図があると考えられる。ベトナムには米国やフランスとの関係において極めて困難な歴史があり、ベトナムを引き込むには何か非常に実質的なものが必要だ。南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)をめぐるベトナムと中国の有名な紛争は、その条件に十分に合致する。
中国を封じ込める必要性があると頻繁に語られているが、この文脈において、たとえば次のような計画が練られていると推測することが十分に可能だ。G7諸国として中国にスプラトリー諸島から手を引くよう要求し、その後、同諸島を近隣諸国がその決定と保証の下で分割する。
中国が「国際社会」の要求に従うのが理想的な形だ。一方、中国がこれを断固拒否し、増強する海軍力を支えに自国の路線を継続する可能性はきわめて高い。その場合に備えて、さまざまな国の艦隊から空母部隊をつくることが求められている。政治的には、中国に対する要求がG7主要国すべての軍事力や外交戦略によって支えられなければならない。軍事的観点からは、米国の空母2隻と欧州の空母2隻(たとえば仏の空母と伊の空母)を組み合わせたり、日本の空母を米海兵隊航空機の母艦にするなどして、中国軍に対して局地的な航空優勢を構築することで、軍事衝突における勝利が期待できる。
米国とその同盟国が長年にわたって使用してきた自由な太平洋と航行の自由の保護に関するすべてのレトリックは、単なる空虚な言葉に終わることのないよう、遅かれ早かれ行動に移されるように思われる。
しかし、注意すべきは、軍事行動が始まるまでは、すべてが素晴らしく見えるということだ。スプラトリー諸島をめぐって実際に武力紛争が起こり、中国が米国と欧州諸国の海軍連合と対峙し、その連合を粉砕することができたならば、これはグローバルな意味で米国にとって最も重大な戦略的敗北となるだろう。