内倉統合幕僚長の計画
この計画には3つの重要な要素が含まれている。
日本の防空・ミサイル防衛システムを米国のシステムと統合すること
空域の集中的なレーダー監視体制の構築
空、海上、海中で大量の無人機を活用した沿岸防衛構想「シールド(SHIELD)」。2028年に運用開始の予定のようだが、それ以前に危機的状況に陥る可能性もある。
ここで重要なのは無人機である。日本の長い海岸線を防衛する為には、慢性的に人員不足にある状況では難しい、無人機はその弱点を補うものである。最初の二つの項目は遅きに失した感がある。ミサイルの脅威はすでに長年にわたって存在しているからだ。
無人機がもたらす変化
現代の経験が示すように、無人機を持たない海軍部隊はほとんど役に立たないが、無人機を備えれば強力な防衛体制を築くことができる。
露軍は、ウクライナでの特別軍事作戦で、商業用もしくは特殊設計された様々なタイプの無人機を使用している。
例えば、航続距離100キロのグラナト-4は、24時間体制で偵察と目標指示を行う。5~10キロの近距離の偵察には、マヴィック(Mavic)-3やBPLA-400Tといった航空無人機が使用され、それらの多くには、熱画像装置、赤外線カメラ、ライダー(LiDER)が搭載されている。
マヴィックのような多目的用途の無人機は、偵察、攻撃、物資の輸送、部隊の支援に使用されているが、これは第二次世界大戦時には考えられなたった手段だ。
与那国島(東西の長さ約12キロ、南北幅約4キロ)のような小規模の島を、無人機で防衛することは十分可能だ。40~50キロの航続距離能力のある攻撃・偵察用無人機は、活動範囲を沿岸海域まで拡大し、敵の装備、火砲、海軍の船舶までを攻撃することができる。
例えば、露の無人攻撃機ランセットは、戦車、装甲車、自走砲、砲兵を攻撃した。2025年11月までに、特別軍事作戦では、4000発以上のランセットが使用され、1070の大砲、600台以上の自走砲、500台以上の戦車、200以上のレーダー基地を破壊した。
米誌 ザ・ナショナル・インタレストによれば、NATO諸国からウクライナに提供された砲兵兵器の最大50%がランセットによって破壊された。またランセットは海上にある目標物への攻撃にも使用された。2025年6月、ランセットはウクライナの無人水上艇マグラ(Magura)V7を破壊した。水上艇には空対空ミサイルAIM-9Mを2基を装備していたにもかかわらずだ。
ウクライナ製無人水上艇「マグラ V5」
© AP Photo / Ministry of Digital Transformation of Ukraine / Daniyar Sarsenov
ウクライナはマグラやカトラン(Katran)といった無人水上艇を開発、運用している。露の黒海艦隊の艦艇、セヴァストポリの海軍基地、クリミア大橋を攻撃する為だ。最近では、商船やタンカーも攻撃対象になっている。とはいえ、2025年8月末に、露の高速無人艇が、ドナウ川河口でウクライナ海軍の偵察艦シンフェロポリを攻撃し、沈没させている。
こうしたウクライナの小型で自爆型の無人艇を使った戦術は、第二次世界大戦時の「蚊の艦隊」や日本の特攻艇の特徴に通じるものがある。ウクライナの無人艇は、航続距離が800~1200キロ、無人機、重機関銃、魚雷、携帯式防空ミサイルシステム、空対空ミサイルシステム、そして最大300キロの大量の爆薬が搭載可能だ。
強調したいのは、これら兵器はすべて少人数の乗組員で操作が可能で、特に奇襲攻撃を伴った上陸作戦の防衛や反撃に有効であると言うことだ。要するに無人機を備えた1個中隊で、半径40~50キロの島と海域を監視下に置くことができる。
与那国島にある、自衛隊によって設置されたレーダー塔
© AP Photo / Ayaka McGill
なぜ与那国島なのか
2024年以降、与那国島にはレーダーや電子機器が配備され、戦略的拠点となっている。
約400キロの探知距離を持つレーダーは、台湾のほぼ全域、台湾海峡北東半分をカバーし、中国沿岸の福州市にまで到達し、中国人民解放軍の航空機の飛行を追跡することが可能だ。
陸上自衛隊のドローン妨害システム(写真は陸上自衛隊より)
© 写真 : Japan Ground Self Defense Force
日本のドローン電波妨害装置は、おそらく米国海軍に配備されているAN/SLQ-32(V)6もしくは(V)7の地上配備型である。これらは電波源を検知し、標的を航空機や誘導装置を使って妨害をしながら、追尾することができる。有効範囲は電波の到達距離によって制限されるものの、地上に永続的に配備されることによって、日本は24時間体制で監視と対応が可能となり、台湾北東部地域で活動する中国航空機に対し、実質的な抑止効果を与えることができるかもしれない。
そのため、軍事計画の観点から見ると、与那国島への攻撃は論理的な一手のように見える。目的は装備を破壊することだけでなく、装備を回収して復旧を不可能にすることにもある。これにより、与那国島は内倉幕僚長の参謀本部が開発を進める沿岸防衛システムを展開する上で、最優先地点となっている。
このシステムが、台湾をめぐる潜在的な衝突が始まる前に完成すれば、敵にとって無視できない、非常に厄介な役割を果たす可能性がある。