減産量めぐりサウジと足並み揃わず
UAEの国営通信は28日、OPECと非加盟産油国も加えたOPECプラスから5月1日付で脱退すると発表した。国の長期戦略、生産能力、そして世界エネルギー市場の利益に沿った「主権的な決定」だと強調している。
UAEの脱退はイラン情勢悪化前から検討されていたとされる。背景には、OPECを主導するサウジアラビアとのすれ違いがある。協調減産体制では各国に原油生産量の割り当てがあるが、UAEは引き上げを求めていたのに、その意向が聞き入れられなかったことが脱退の主な要因となったとみられる。
また、サウジ・UAEの溝は経済的なものにとどまらない。イエメン内戦ではサウジが親イランのフーシ派に対抗する暫定政府を援助する一方、UAEは反フーシ派陣営内の分離派である「南部暫定評議会」を支援。年初にはサウジ主導の連合軍側が、UAEから「南部暫定評議会」へ兵器が輸送されたとしてイエメン南部の港を攻撃すると伝わるなど、両国の軍事的緊張も高まっていた。
もともとこうした問題を抱えていたところに、米国によるイラン攻撃が発生。UAEはイランからの攻撃を受けるなか、湾岸諸国が連携して対処しなかったとして不満を募らせたとみられる。これまでのすれ違いと相まって、今回の脱退決定という形で分裂が表面化したとの見方もできる。
考えられるシナリオ
UAEが脱退したあとの原油市場はどうなるのか。OPECプラスは加盟国の協調減産で成り立っていたが、脱退したUAEが増産すれば他の国々も続かないとは限らない。
UAEは主要な産油国ではあるが、サウジアラビアほど支配的ではない。OPECプラスではサウジ、ロシア、イラク、クウェートなど他の産油国が依然と大きな影響力を持つ。
2025年の世界原油生産量に占めるOPECプラスの割合は48%程度だったが、UAEを引くと45%まで低下するとみられる。これを大きいとみるか小さいとみるかはともかく、UAEの脱退それ自体がOPECプラスを崩壊させることにはならないだろう。
だが、OPECの結束、信頼の揺らぎや内部対立という観点から見ると話は違う。UAEの脱退はアラブの盟主たるサウジへの挑戦とみなされ、湾岸諸国内の緊張を一層と高める恐れがある。
さらに、UAEに続き他の諸国も離脱すれば協調体制が崩れる。そうなれば国際原油市場は供給過多となり、価格の暴落につながる可能性がある。
一方で、UAEが増産したのに原油価格が下がらないという事態も当然想定しうる。イランと米国の交渉は膠着状態に陥っており、ホルムズ海峡や地域を巡る状況を楽観視できないからだ。実際、脱退発表後の国際原油市場はブレントで2.8%、WTIで3.7%の上昇となっている。現時点でUAEの脱退による下落圧力は影響が限定的なようだ。
日本にとってはメリット尽くし?
日本は原油の4割以上をUAEから調達している。日本メディアによると、UAEの駐日大使はこのごろ、日本へのエネルギー供給は最優先とする旨発言している。
UAEはホルムズ海峡封鎖の影響を直に受けているが、ホルムズ海峡を経由しない迂回ルートとして、アブダビの油田とオマーン湾に面する輸出港を結ぶ「ハブシャン・フジャイラ原油パイプライン」を持っている。ペルシャ湾外のフジャイラ港は戦闘開始後に攻撃を受けたが、復旧後は原油輸出が急増していると伝わる。
原油の代替調達先の確保を急ぐ日本としては、UAEが増産すれば追い風となる。また、OPECの協調体制が崩れて原油価格が暴落すれば輸入コストが下がるため、少なくとも短期的には恩恵を受けられそうだ。
だが、長期的には不安材料となりかねない。産油国の不安定化、財政悪化は将来の原油供給に影を落としかねない。また、中東諸国間の緊張もマイナス要因となる可能性がある。さらに、日本経済からみても、石油の下落で円高圧力が高まると、輸出企業にとってはマイナス要因となり得る。
どちらに転ぶかわからない、今回のUAEのOPEC脱退決定。日本はこの状況をうまく利用して、エネルギー危機を乗り切ることができるのだろうか。