フワン・ジュングク氏は対話の参加のために平壌に求められる諸々の条件を列挙した。たとえば、ウラン濃縮の停止。兵器用プルトニウム製造の停止。ヨンビョン核施設へのIAEA査察団の受け入れ。これらが北朝鮮完全非核化の最初の一歩であるという。
一方の北朝鮮側も、朝鮮労働党中央委員会書記ツォイ・リョンヘ氏がモスクワで開かれたロシアのラヴロフ外相との会談で述べたところによれば、既に達成済みの合意を基礎に6者協議を再開する用意がある、としている。
これら声明にオプティミズムが掻き立てられもする。しかし専門家たちは慎重である。当事者のアプローチは相互に食い違っている、というのである。
朝鮮国際政治委員会のチョン・テイク議長は、「体制が完全に瓦解する危機に直面しない限り、北朝鮮が核開発を停止し、核保有国のステータスを返上することはないだろう」という。そして、この問題は軍事的には解決されえず、可能なのは制裁と交渉のみである、とする。
韓国も米国も日本も、「北朝鮮の体制は今にも瓦解する」と見なしている。しかし、ロシア科学アカデミー朝鮮・モンゴル研究科代表アレクサンドル・ヴォロンツォフ氏は次のように見ている。
「現実はそうなってはいない。北朝鮮は、テンポこそ鈍いが、着実に成長している。独自の国際関係も構築していっている。もちろん米国はこれが気に入らない。そこでここ最近は米国の北朝鮮への圧力が高まっている。国連の場で人権問題やソニー・ピクチャーズへのハッカー攻撃について北朝鮮非難が展開されるという形で、それは表れている。あたかも米国とその同盟諸国は、あえて北朝鮮に強硬な反応をとらせ、たとえば核実験など行わせて、もって次なる制裁を導入する口実としようとしているかのようだ」
ちょうどこのほど朝鮮半島沿岸を舞台とした米韓海軍演習が終結したところだ。やはり北朝鮮は、日本海にミサイルを発射するなどでこれに応じた。
交渉を再開する用意あり、との声明を出すこと事態は簡単だ。しかし交渉相手に真正の決意を抱かせ、デッド・ポイントから動き出させるためには、自ら具体的一歩を踏み出すことが必要なのだ。