JR中央線・国立駅前から延びるサクラ並木が有名な国立市。それと交差する「さくら通り」は、約50年前にソメイヨシノ約180本が植えられ、春は花のトンネルが目を楽しませる。だが11年、腐った木が倒れて車を直撃する事故が発生。歩道も盛り上がった根によるでこぼこが目立ち、市は道路改修に合わせて16年度までに並木の半数を、残りは10年以内にすべて植え替える計画を立てた。
これに市民の一部から「歴史的な景観が失われる」と反発の声が上がった。市は伐採を倒木などの危険がある34本にとどめる計画に改めたが、今年1月にはサクラ4本を切ろうとした市職員らに約20人が抗議し、作業が中断した。
一方、沿道の高齢者からは「歩く時に危ない」との声もあり、市は今月に入って、今季の花見シーズン後に伐採を再開する方針を決めた。だが、木の延命策などについてさらに話し合いを求める住民側との溝は埋まっていない。
都の13年調査によると、都内の街路樹約84万本のうち、約5%の4万4000本がサクラ類。品種別の統計はないが、東京が発祥のソメイヨシノが大半とみられる。特に植樹が進んだのが、五輪を控えて緑化活動が盛んになった昭和30年代。毎年、大勢の花見客が訪れる上野公園(台東区)の中央園路や千鳥ケ淵(千代田区)のサクラ並木もこの時期に整備が始まった。
だが、元都職員で日本樹木医会長の椎名豊勝さん(70)によると「ソメイヨシノは街路樹には不向き」という。ヤマザクラなどと比べて成長が早い分、衰えも早い。巨木化して横に広がるため枝切りが欠かせず、切り口から病原菌が入りやすい。一部の専門書でも紹介されている「60年寿命説」について、椎名さんは「科学的根拠は薄い」と否定的だが「東京のサクラ全体が老い、病気がちになったのは確かだ」と語る。毎日新聞より。