日本外務省高官の情報筋が読売新聞に対して明らかにしたところによれば、日本政府は中国に対し、軍事予算の透明性を高めるよう要請しており、北京の式典に日本の総理大臣が出席することはありえない。これについて、モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は安倍首相の式典参加拒否には他の理由もあるとの見方を示し、次のように語っている。
「中国で行われる第2次大戦終戦70周年を祝う式典への安倍氏の出席拒否には2つの大きな理由がある。
1つは日本は終戦を1945年8月15日としている点。この日、天皇はラジオで国民に敗戦を明らかにした。ところが9月2日は日本が降伏文書に調印した日で日本としてはことさら思い起こしたくはない。
2つめは、日中間の地政学上のライバル争いが激化したことと関連する。第2次大戦の問題について諸国間で分かれる様々な立場もそうした争いのひとつだ。日本はこれに関して十分な責任をとり、謝罪を行ったと解釈している。ところが中国はそうとは捉えていないのだ。」
-安倍政権下で今、過去の白紙化が行われているようだという意見が専門家の間から漏れ聞こえるが、これは正しい見解だろうか?
「安倍氏はナショナリストであり、過去の歴史問題を自分の選挙キャンペーンで利用することで、社会の支持を集めている。安倍氏は、中国とは戦争問題に拘泥せずに新たな基盤での関係構築が必要という立場をとっている。
言っておかねばならないのは安倍氏の背後にはおびただしい数の右翼、神道組織、戦争功労者組織がおり、それらが安倍氏を支持している以上、安倍氏は彼らの発言に耳を傾けざるを得ないということだ。
これらの組織が復讐的性格をもっており、世界ですでに認められている第2次大戦の結果を検証しなおすよう、安倍氏をけしかけていることは秘密でもなんでもない。そればかりか、日本が反戦的政策を退け、第2次大戦中に日本の軍部が侵した犯罪に対して有罪であると考えるのを止めるようけしかけている。
だが、復讐主義の要素が現れているのは安倍氏が右翼団体の組織に常時参加していることだけでない。たとえば内閣の写真撮影に731の数字が胴体部分に書かれた戦闘機を使うなどの奇行もそうだ。これは731部隊をほのめかしている。
それに安倍氏がよく使う『日本を取り戻す』という呼びかけだが、これは経済的だけでなく、軍事面でも強い国を指している。」
-安倍氏がこの方向性で遠くに進んでしまう危険性は? 日本の社会はどんな反応を見せるだろうか?
「日本社会は真っ二つに割れている。だが将来は活発な軍事政策を支持する声は高まるだろうし、もちろん安倍氏はこうした声に重きを置くだろう。非戦的立場を拒否するプロセスもすでに静かに進行している。集団防衛とテクニカルタームの新たな解釈も受け入れられた。
私は、日本は防衛分野で米国と協力するという新たな原則をとり、米国の完全な軍事同盟国として、積極的な攻撃を行う権利をもつ機能を引き受けると思う。敵の軍事基地に先制攻撃をかける権利が今、盛んに討議されているが、おそらくこれも認められるだろう。
こんなふうに、憲法見直しが行われずとも、軍事ドクトリンの見直しで日本は完全なる軍事大国になり、それに見合う軍事ポテンシャルをもつことになってしまうのだ。もちろんこうした政策は中国の軍事強化が原因でこの地域の戦略バランスが急速に変化したことへの反応なのだが。だが憂慮の念を招いているのはナショナリズムへの重みが増したことだ。
戦時中の日本の政策を白紙化する安倍氏が当てにしているのは、軍国主義時代の過去に何もコンプレックスを持たない次世代だ。将来、非戦国の地位や戦争の記憶によるブレーキを日本が我慢することのないようためだ。
この安倍氏の企みに拍車をかけているのが日本の国内状況だ。なぜなら今、野党は完全に後方にまわってしまい、事実上発言権を持たないからだ。一方でナショナリストらは中国との関係緊張化へと事を押しやっている。
だが中国は日本にとっては危険な存在ではなく、特に経済において可能性を開く窓だ。だからこそ今、安倍氏は苦しい立場に立たされている。安倍氏が中国に行かないとなると、これは対中関係に打撃を与えるだろう。
行けば、国内での自分の立場を壊すことになり、彼に忠実な有権者層の信用は損なわれる。だが、安倍氏は最後は決着をつけねばならない。」