中国製品は安い。かつ、近年は、その品質も、先進諸国の水準に近づいている。しかも、中国は、欲しいという人には誰にでも武器を売る。これが暗い予感のワケである。
国際武器市場における中国の風評が固まったのは1980年代である。この頃中国の武器製造企業は、内需の急激な縮小を受け、積極的な輸出に転じた。政府もこれを支援した。当時の中国では、途上国としても抜きん出て人件費が安かった。加えて国内には1950-70年代に構築された製造ラインがあり、相対的に単純な武器を大量に製造する能力があった。こうした基盤があって、1980年代、右へも左へも武器を売る中国、廉価で大量に武器を売る中国、という評判が固まった。
しかし、こうした評判を産むことになった経済的・政治的要因は、目の当たり消滅していっている。まず、中国製武器が通常より安くあるための特別な理由など何もない。中国企業の賃金は急激に上昇している。国防産業も、質の高い労働者・技術者をめぐって、民間企業と競争することを余儀なくされている。たとえば航空部門やロケット部門の人件費は、既に東欧諸国の水準に達し、なおも上昇を続けている。不動産も電気代も各種行政サービスも軒並み値上がりしている。また、国防産業の資材・資源調達の輸入頼みも進んでいる。
第二に、中国の国防産業は、1980年代と異なり、もはや輸出に過度に依存してはいない。中国の軍事費の三分の一が、戦車シリーズ、兵器シリーズの購入に当てられている。また、兵器の開発にも巨費が投じられている。これらの費用と比べると、輸出は微々たるものである。
第三に、1990年代・2000年代、中国の武器輸出への管理は非常に厳格になった。今や全ての輸出契約が、複雑な認可システムを通過しなければならなくなっている。
中国の武器輸出はまだ数年は伸び続けるだろう。しかしそのことは、中国の政治的・経済的影響力が世界各地で増大していることと緊密な関係をもつ、計画的なプロセスである。武器輸出は中国にとって、それ自体目的であり、かつ、新たな超大国の栄光と影響力を強化するための手段なのである。