ロシアの著名な東洋学者で元日本駐在大使のアレクサンドル・パノフ氏は、日本がインドなどアジア諸国との関係を結ぶときに第一に念頭に置いているのは中国というファクターである、と語っている。
「ここに複雑な構造を探す必要はない。日本にとっては中国を囲む国々と良好な関係を探すことが大事なのである。中国を抑止しうる、一種のベルトである。ただし、むろん、これら諸国における半日感情を鎮め、中国の参加をともなう反日連合の創設を妨げることなくしては、それがどのように機能するのかなど、想像するのも難しい。しかし現実主義的政策の観点からは、日本とインドの間の軍事的・政治的協力が何か大きな、地政学的とはいわないまでも、せめて地域的な効果を生むことは、まず考えられない。日本にはインドとの間に深い歴史的関係の伝統がない。それは新たに打ち立てられねばならない。そしてそれは、金と労力、人的資源を要することだ。それらが現状で欠けている以上は、私は日本とインドの関係の変化に注目しようとは思わない」
専門家は、日本のインドに寄せる関心が最近とみに高まっていることの説明として、日本の安倍晋三首相よろしくナショナリスティックな新リーダーがインド指導部についたことを挙げている。つまり日本の指導部は、中国というファクターに加え、インドとはある種のイデオロギー上の基盤が共有されている、と考えているというのである。しかし日本は、インドを反中構造の中に押し込もうと努めることは出来ても、それが何らかの成果を生むとは考えにくい、とパノフ氏は語る。インドはそう簡単に、政策を転換させたり、中国との関係を断ち切らせたりなどできるような国ではない。もちろん、インドと中国の関係は、相当に複雑ではあるし、領土紛争もある。しかし、一方で、インドと中国はBRICSで肩を並べている。インドが間もなく上海協力機構に迎えられるという話もある。日本といえども、インドを対中戦に利用するようなことは出来っこない、とパノフ氏は語る。
また戦略技術分析センターのワシーリイ・カシン氏も、日印軍事協力はそう簡単な事業ではない、と語っている。
「日本はいま、軍事技術の輸出国になろうとしている。問題は、日本の装備が非常に高価で、また日本そのものが自立していない点である。自立性というのは武器市場にとっては重要な要素だ。日本は様々な種類の武器を製造しているが、うちの多くが米国の参加のもとに行われている。米国のライセンス生産だったり、米国のコンポーネントを使用していたり。これで米国は、日本の輸出の方面を限定することが出来る。実は米国自身がインド市場に非常に強く乗り気なのである。米国は、個々のケースごとに、日本のインドへの装備の輸出を許すか許さないかを検討するだろう。もうひとつ、重要な要素がある。日本の産業が非常に高い科学技術水準にあるのは言うまでも無いことだが、日本の国防産業は多年、非常に限られた品目で製造を行ってきたために、結果として、常軌を逸して高価なものになってしまっている。日本は技術の輸出に踏み切るのかも知れないが、おそらくは軍事的なものでなく、軍事・民間両面で使用できるもの、機械工作とか、部品製造とかであろう。これら全てのケースを米国は注意深く見守っている」
ただし、カシン氏も、軍用電子機器や対潜水艦システム、潜水艦そのもの、艦船用および陸兵用ディーゼルエンジンといった方面では、日本とインドも協力できるだろう、と指摘している。または宇宙。日本も独自の宇宙プログラムを進めている。しかしこれ以外の分野では、日本は上位に組み込むことは出来ないだろう、とカシン氏は語る。日本はたとえば、航空部隊の創設についてロシアのライバルを張ることは出来ない。