日本の防衛費増、いいか、悪いか?

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日本では2015年4月1日より新予算が発効する。本年度予算の防衛費は拡大されており、これについては露日双方の専門家の中でも評価が分かれている。

元民主党政権で内閣官房副長官を務めた斉藤勁(つよし)氏は日本の防衛費拡大については批判的姿勢を表している。

「防衛予算の細部まで把握しているので正確な話にはならないと思うが、安倍第2次政権がスタートして今日まで、前の民主党政権時の後半で尖閣諸島をめぐる問題があり、今の政権としては様々な観点で防衛費を考えていると思うが、基本的には東アジアの平和と安定ということになっていけば、防衛費は当然増えないほうがいいわけで、最低限の専守防衛の立場に立った防衛予算を組むというのがわが国の一貫した政策としてあるが、必要以上の防衛費の突出は慎むべきというのは私だけではないと思う。」

斉藤氏は隣国関係における問題の存在も認めたうえで、次のように語っている。

「北朝鮮との関係では依然として、国交正常化の交渉はそれぞれが期待をもっていてもなかなかテーブルにつけない状態。日韓関係では首脳どおしがなかなか対話ができない困難さがある。中国とは首脳どおしの会話が始まり、あるいは外務相会議が開始されるなど、困難さは克服していく過程にあると思う。平和外交は話し合いが第1前提であり、危機感をあおりたて、防衛費を上げることは外交政策に矛盾することと私は思っている。」

斉藤氏は、中国にも日本との相互関係強化のため、ある一定の条件を作る必要性を指摘している。

「少なくとも中国と日本も国同士が戦争するということは誰もが考えてはいないし、あってはならないことだと思う。ただ尖閣を巡る様々な動きの中で軍事衝突が起きるのではないかという危惧が国内に有ることは承知している。それをどう話し合いで解決しようとするかというのが外交であり、衝突が危惧されるから各国が軍事力をエスカレートさせるというのは大変問題であると思う。一方で中国の防衛力について日本国内では不透明さがあるのではないかという指摘が見られるため、中国自身の軍事力の増大について国際的にしかるべく説明をしてもらうことが緊張感をなくすことにつながると考えている。」

米国カナダ研究所の上級専門家で元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏は今回の日本の防衛費の伸びを大げさに捉える必要はないとして、次のように述べている。

「2%の防衛費の伸びというのは額としては注目を惹くようなものではない。日本が尖閣諸島付近の状況を把握するため、諜報活動費を拡大せざるを得ないのは分かりきった話だ。つまりこれはある地域に限定された財政行動といえる。

だが、日本の防衛政策には質的変化は生じていない。ただしこれは今や集団防衛に取り組めること、または日本が平和創設の目的であれば自衛隊を世界のいかなる戦闘地域にも送り込むことができるという決定がとられたことを考慮しなければ、の話だ。こうした行動も防衛費拡大を要求するものだからだ。」

日本政府は防衛費拡大の決定をとるに当たって、これに対する反応を考慮しているだろうか、との問いに対して、パノフ氏はさらに次のように語った。
「中国がこれに猛反対するとは思わない。なぜなら、中国の国防費も常に増大しているからだ。中国画注意を集中させているのは日本の外交政策の政治的側面でも、第2次大戦の結果を見直そうという動きに関連した部分だ。これが中国が日本の政策に向ける批判の主要点であり、日本がとんでもなく軍事力を伸張させているということではない。繰り返して言うが、中国自身がこれを行っているのだ。このため、この路線で中国側から何らかの批判が出るとは思わない。」

これに対して、軍事政治調査センターの所長で、モスクワ国際関係大学の元学長のアレクセイ・ポドベレズキン氏は、日本の軍事力増強はアジア太平洋地域の安定を損ねかねないとの見解を次のように表している。

「日本の軍事力拡大論理は2つの状況から生じている。

第1には米国がアジア太平洋地域に自国の連合国の同盟を形成し、軍事プログラムへのより積極的な参加を求めようとしていることだ。この同盟はまず中国に対抗したものでなければならない。同盟にはベトナムやフィリピンまでもが引き入れられようとしている。

第2は、アジア太平洋地域におけるロシアの影響力の伸長に関連している。以前はロシアの影響力はほとんど見られなかった。例えば同地域の貿易収支でもロシアの占める割合はたった1%だったからだ。

だが今や、ロシアの極東地域に向ける注目度の上昇を見ても、それに関連した省を作り、ロシア東地域の発展に資金を割譲していることを考えても、ロシアは事実上アジア太平洋地域の堂々たる一員になりつつあり、この地域での軍事アピアレンスの観点からもそれが言える。

当然ながら日米は、アジア太平洋地域に新たな力の中心が現れれば、影響力の配分も見直されてしまうことを理解し、自国の立場を強化しようとしている。こうしたすべてが日本の背中を押して、軍拡競争に参加するはめになっている。日本はかなり積極的なグローバル軍事大国となりつつある。すでに以前のような一地域国ではない。

これはまず、日本がここ数年行なってきた政治の結果だといえる。そして第2には、日本が、この地域の他の諸国も同様だが、ナショナリズム的な要素を強めた結果だ。これは想像不可能な結果をもたらすだろう。多くの軍事政治的野心、計画が息を吹き返す恐れも否定できないと思う。1930年代に逆戻りすることはおそらく100%ないだろうが、それでもそれに似た状況を呈するかもしれない。」

ポドベレズキン氏は、日本で起きているこのプロセスがアジア太平洋地域に安定を付与することはないとの確信を示し、さらに次のように語っている。

「アジアでは米国の利益になるわけでも、日本のためになるわけでもなく、逆に中国とインドに利になるような、客観的な力の相関関係に変化が起きつつある。いいかえれば、政治力、経済力の急激な変化が生じており、これによってプレーのルールの変更も生じている。今あるプレー・ルールは中国、インド、インドネシアやマレーシアにとっては比較的不公平なものだ。

プレー規則、基準を変えることに合意する方法はある。つまり交渉を行ない、アジア太平洋地域の安全保障システムのようなものをつくることだ。これに一方では日米が、もう一方では中国、インド、インドネシア、マレーシア、ベトナムが加わり、地域の新たなシステムについて合意を図るのだ。

だが今までの経験から見ると、こうした交渉スキームは機能せず、しかも米国は意識的に地域における自国の経済、政治上の影響力の低下を穴埋めしようとしている。つまり軍事力で優位性を示そうというこうしたプロセスはこの先も続くだろう。これが地域状況を不安定化させるものと見られる。」

ポドベレズキン氏は、仮に日本もまた米国の連合国として、または独自に防衛力を伸張した場合、アジア太平洋地域の安定、安全レベルの引き下げに貢献してしまう危険性を指摘している。

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