中国は1年前、南沙諸島での人工島の建設を開始した。中国のこの活発な動きは、南シナ海の同海域を自国の領海だと考えているベトナムとフィリピンからの激しい抗議を引き起こした。またインドは、中国が自国の経済力をインド洋におけるプレゼンスの強化に変換していることも懸念している。インドの有名な政治学者でジャーナリストのビナイ·シュクラ氏は、南シナ海のシーレーンにおける覇権は、インドのモディ政権の戦略的優先事項であると指摘し、次のように語っている。
「中国による南シナ海の島を含む施設などの建設は、隣国の懸念を呼んでいる。インドもそうだ。中国はインド洋におけるプレゼンスの拡大を目指している。これが、インドが懸念している主な理由だ。モディ大統領の米国訪問、ならびにオバマ大統領のインド訪問では、初めてこの問題に触れられた。双方は、同海域における航行の自由と上空飛行の自由を保障する必要があるとの見解で一致した。これはインドにとって極めて重要だ。南シナ海はインドとベトナム、その他の友好的な国を結んでいる。このルートでロシア産の石油もサハリンからインドへ運ばれている。これは太平洋への便利な出口でもある。インドは、自国の長期的な利益を確保するために全力を尽くすだろう。」
一方で中国は、同海域における自国の地位を粘り強く、そして明確な目的を持ってを強化している。そして南シナ海の島々をめぐる中国とベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、そして台湾との領有権争いが、最近先鋭化した。中国国際問題研究所付属南太平洋研究センターのシェン・シシュン所長は、ラジオ「スプートニク」のインタビューで、中国が同海域で自国の利益を犠牲にすることはないと強調している。
ロシア科学アカデミー東洋研究所のタチヤーナ・シャウミャン専門家は、インド洋への影響力をめぐるインドと中国の争いは、両国の経済力の成長具合に比例して先鋭化するとの考えを表している。シャウミャン専門家は、同時に、米国の反応や利益を気にすることなく、ゲームのルールが確立されるだろうと指摘し、次のように語っている。
「インド洋で独自のゲームの規則を確立するというインドと中国の願望は、両国が米国などの影響の範囲を、少なくとも制限しようとしていることを示している。しかし、すでにそこに米国は存在している。インドと中国はそこからどのようにして米国をつまみあげて、追い出すのだろうか?インドと中国はインド洋の状況を、米国の利益ではなく、まずは自分たちで管理しようとしているように思われる。インドと中国は、なんらかの利益の衝突があるにもかかわらず、インド洋で激しい紛争が起こることを許してはいない。もしそのような紛争が起こった場合、両国は自分たちの力で解決しようとするだろう。」
インド洋の支配強化に関する意向を含む、同海域におけるインドと中国の影響力の増大は、米国の「アジア回帰」戦略にとって新たな障害をつくりだすだろう。