ロシア科学アカデミー極東研究所コリア・モンゴル課のアレクサンドル・ヴォロンツォフ課長は、韓国の激しい反応に驚きを表すことはなく、次のように語っている。
「韓国の激しい反応は、日本が韓国との領有権争いで自国の立場を著しく強化する用意があるとする最近の報道の一連の兆候で説明できる。特にマスコミでは最近、安倍政権が、今は隠岐の島町でのみ祝われている地域の記念日である竹島の日を、国民の祝日にすることを計画しているとの証拠が現れた。これは、ロシアの南クリルと関連した北方領土の日と同じようなものだと思われる。したがって韓国は以前よりも断固とした反応を示す必要があると考えている。韓国は、例えば落下傘降下などの侵略を想定し、トクト防衛に関する軍事演習を実施した。これは日本と韓国の緊張を高めている。このような演習が繰り返され、さらに規模が拡大する可能性もある。またトクトに関する韓国の見解を拡大するために、国際社会との活動が活発化する可能性もある。」
いずれにしても、「外交青書」における日本の主張に対する韓国の反応が、日韓関係を改善することはないだろう。しかしその責任は日本が負うことになる。なぜ日本は韓国との関係を損ねているのだろうか?ロシアの著名な東洋学者で、米国・カナダ研究所上級専門家のアレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使は、次のように説明している。
「私は2つの側面があると考えている。一つ目は、日本の外交政策の戦略的思考があまりクリエイティブではなく、関係のあらゆる方向性をカーバーしていないことと関連している。日本が米国との関係に固執し、とらわれていることはよく知られている。例えば日本と米国は、中国によって設立されたインフラ投資銀行への参加を拒否した。しかし、米国の同盟国を含む多くの国が、このプロジェクトへの参加を決定した。安倍首相は、銀行への不参加を公に表明した。これは、米国が日本を信頼できる自国のパートナーであるとみなせることを物語っている。このような行動の結果、日本が孤立するのは明らかだ。」
パノフ氏は、しかし日本は地域に変化の時が訪れ、地域の政策は米国の利益のみに帰着するわけではないという現実を認識できないと述べている。一方でパノフ氏は、米国自体も、その同盟国である日本と韓国の関係悪化に関心を持ってはいないと指摘している。またパノフ氏は、日本と韓国の関係正常化を、さらにもう一つの重要な要素が邪魔していると述べ、次のように語っている。
「その要素とは、傷つけられたプライドだ。日本は、全ての隣国と領有権問題を抱えている。私はこの状況について、隣国との関係が芳しくないために、日本が再び地域で影響力を持つことができないようにするために、米国が意図的につくり上げたものだと考えている。日本はこのようなかたちで、故意または無意識のうちに、領土問題の『囚われの身』となった。そして領有権争いのテーマは、日本の政治エリートの間で常に話題に上っている。日本社会には日本が侵略国家であり、戦争に負け、その結果領土を失ったという認識があるが、日本社会および日本のエリートの大部分が、これを受け入れ、認めることができない。日本は自国の犯罪を認めて和解の道をとったドイツのように、自国の過去を克服することができない。ドイツのこの行動が、欧州および世界で相応する地位をドイツに与え、ドイツは欧州のリーダーにまでなった。日本は乗り越えることができない。一方で日本では、隣国との関係を改善する必要があるとの認識がある。日本外務省はこの方向性でいくつかの試みを行っている。例えば、日本、中国、韓国の3カ国関係における協力だ。しかし日本は同時にこれらのポジティブな試みを台無しにするような行動をとっている。このような矛盾が、日本に地域で実際に影響力と権威ある政策を実施する可能性を与えることはないだろう。」