リュー米財務相は訪問で中国に対し、元の交換レートの透明性を大きく高めるよう呼びかけた。その一方で米国からはドル、ユーロ、ポンド、円と並んで中国元をIMFパスケットに入れることは望んでいないとの声明は出されていない。少なくとも、公式的な文書でこれが表されることはなかった。
「通貨戦争」で中国を相手にした新たな戦線を、リュー財務相は米国に到着するなり開いた。その時まで、世界ではすでにおよそ50カ国が中国のグローバル・プロジェクトである「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への参加を表明していた。
世界経済国際関係大学の専門家アレクサンドル・サリツキー氏は、あらゆる手でAIIBに対抗しようとしてきた米国にとって、この事実は「かなりうれしくないサプライズ」だったとの見方を示し、次のように語っている。
「銀行は当初から成功しないと言われてきた。その一方で中国は割合迅速にアジアの発展途上国を引き入れ、そればかりか先進国も少なからぬ数、仲間に入れた。その中には英国も入るが、これが特に米国には気に入らなかった。それと今また、米中間で通貨金融軋轢が現れているのも、これが一因だ。
米財務省はかつて、中国は通貨レートを操作していないと認めざるを得なかったことがある。そのときは米国は元についてあらゆる悪い噂を飛ばすことを多少控えたのだが、今度は中国との対抗をIMFのフィールドに応じて開始したというわけだ。」
サリツキー氏は、AIIBは米中関係における強力な苛立ちの元であり、米国にとってはIMFの準備通貨バスケットに元が入ることを阻止する動機に過ぎないと断言し、さらに次のように語る。
「米国はIMFに対する自国のコントロールを絶対に明け渡したくない。国際金融界における中国の形式的なプレゼンスは、今のところは、国際経済における中国の実際的役割に比べて格段に小さい。元に対するこうした妨害行為を行なうことで、米国は国際金融制度で中国が立場を強めているという、きわめて客観的な傾向に向こうを張っているが、これは無駄なことだ。米国が元を妨害しても何も生まないことは明らかで、なぜならやはり、中国通貨の役割がこの先高まることははっきりしているからだ。」
北京でリュー財務相は今年の米中関係の大きな鍵を握る2つの事件を用意した。1つが戦略的、経済対話であり、もうひとつは習国家主席の米国訪問だ。協議は根深い問題を掘り起こした。リュー財務相は中国に対し、中国市場の大幅な透明性を保証するよう呼びかけた。特にこの透明性拡大を銀行分野、金融システム全体での技術交換に対する制限撤廃で確保するよう求めたのだ。
李首相はこれに対し、米国からは二重の意味を持つハイテク製品輸出体制の自由化を期待するとやり返した。双方が習国家主席の米国訪問までにこうした問題を解決することはないだろう。最大限で、これを多少抑制することが関の山だ。
一方でIMF準備通貨バスケットの拡大問題は5年に1度しか取り上げられない。この問題はまさに今年の秋、ワシントンでの大会で話し合われる。大会期日は通常9月。そしてまさに同じ月に習国家主席は米国を訪問する。