アジアインフラ投資銀、緒戦は中国の完勝、米国の次なる一手は

© AFP 2023 / Takaki Yajima/POOLアジアインフラ投資銀行
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アジアインフラ投資銀行は今年の終わりに始動する。その誕生を阻もうとする米国の試みは破綻した。MIA「ロシア・セヴォードニャ」政治評論員ドミートリイ・コスィリョフが現状を分析し、展望を試みる。

これは政治的な出来事ではない。具体的な実務を担う金融機関である。同行は各設立者から資金を集め、クライアントのクレジットで利潤を上げる。これが同行の担う役割である。

それはどのように行われるのか。ベトナムの専門家チャン・ヴィエト・タイ氏によれば、アジアインフラ投資銀は、まず米ドルで融資を行い、徐々に他の通貨に移行していく。それはもしかしたら中国人民元かも知れない。同氏によれば、そもそもこの銀行を設立するという話が出たきっかけは、中国が4兆ドルもの資本をためこみ、それをどこかに放出しなければならなくなったからだ。中国は、以前は、米国にお金を貸し、利子を受け取るだけだった。しかしもはやそれも足しにはならなくなった。一方で、新たな金融機関の設立に対するアジアの需要は巨大である(最大1兆ドル)。しかし米国の管理下にある既存の国際金融機関、世界銀行やアジア開発銀行は、このような巨額の借款を行うことが出来ず、また行うことを欲しなかった。いま、銀行間に競争が生まれ、クライアントに有利な体制が築かれようとしている。新たな金融構造は、既存の、言ってしまえば「米国の」金融秩序を解体してしまうのか、それとも、それを補完し、その代りとなってゆくのか。それは日々の実務を通じて明らかになっていくことだろう。

NYタイムズ紙にこの問題をめぐる専門家諸氏によるディスカッションが掲載された。うちの一人、エリック・ボーテン氏によれば、中国経済は世界経済とあまりにも緊密に結びついており、中国としても、アジアインフラ投資銀行を「世界経済の現行の構造の外部で」作動させるいわれはない、とのことだ。またパオラ・スバッチ氏は、米国が経済問題を地政学問題にすりかえ、同盟諸国の同行設立への参加を妨害しようとしたのは無駄骨だった、と語っている。またレベッカ・リャオ氏(米国系中国人)は、米国の同盟諸国が新銀行のほうへ走っていることの意味は、同盟諸国は「IMFや世界銀行は時代に追いついていない」と認識しているということだ、と明言している。IMFや世銀は、融資の際に政治的な条件を課すことを常の習いとしている。リベラルな(つまり米国的な)価値観を認めるよう、クライアントに迫るのである。その点中国は、条件をつけることをしない。中国は純粋にビジネスライクである。

しかし一体、米国は、同盟諸国の説得に失敗した今、次はどのような手を指してくるのだろう。同盟諸国は勇んで新銀行へと走って行ったわけだが、今度は彼らを通じて、新銀行を内部から破壊しようとするのだろうか。破壊しないまでも、中国を抑止しようとするのだろうか。米国の元財務相ラリー・サマース氏によると、米国は今回の失敗を受けて、世界経済に対するアプローチを包括的に見直すことを迫られるだろう、とのことだ。一方こちらは現役の、米財務省次長、ナタン・シッツ氏は、米国は新たな金融機関を歓迎する、と述べている。新銀行が世銀やアジア開発銀など既存の銀行と協力するよう期待する、とのことだった。IMFを含め、これら既存の銀行自身も、同様の声明を出している。換言すれば、ワシントンは不可避性の前に降伏したのである。まさに中国の目論み通りに事が運んだのだ。

以上、MIA「ロシア・セヴォードニャ」政治評論員、ドミートリイ・コスィリョフの論考をご紹介した。

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