その章は、キエフ中心部独立広場(マイダン)における、ヤヌコヴィチ大統領退陣とEU加盟を求めた、2013年秋の抗議行動に始まり、ウクライナ南部・東部戦争に終わる。ここに示されている記述法は、二語をもって性格づけることが出来る。すなわち、冷笑的な嘘。
そこにはたとえば、戦士2万20000人からなるロシアの特殊部隊がマイダン撲滅秘密作戦「ブーメラン」を準備していた、と記されている。
また、オデッサの「労働組合の家」がウクライナのナチ信奉者に放火され、中にいた数十人のマイダン反対派が焼死した一件は、誰が誰に殺されたのかが明記されず、「親ウクライナ平和デモ隊」の銃撃で死者が出たことしか分からない書き方になっている。
また、ロシアの侵略者らが平和なウクライナの都市をロケットランチャーで攻撃している、とある。ロシアのエージェントらが鉄道、行政機関のオフィスを爆破し、平和な市民を殺傷し、恐怖と不安を煽ろうとして、ついに成功していない、とも。
キエフのクーデターを支持しないドンバス市民に対し、キエフは懲罰作戦を展開した。その懲罰作戦は、「ウクライナの民衆による、ロシアの侵略に対する戦争」と名付けられている。その戦争は「ウクライナのみならず、欧州や世界の現代史における最重要の出来事である」という。
モスクワ国際関係大学国際研究所主任研究員アンドレイ・イワノフは、この章の執筆者は冷笑的な嘘をついており、また、これ以外の書き方では彼らは書けないのである、と見ている。
「ヤヌコヴィチとウクライナ臨時政府および西側の関係は当初の当初から嘘を土台としていた。ロシアはウクライナの欧州入りを許さないとか、キエフの抗議行動は平和的なものだったとか、ウクライナ市民は誰もがそれを支持していたとか、ロシアはクリミアを占領したとか、ウクライナ南部・東部ではウクライナ軍とナショナリスト軍団がロシアの侵略を撃退しているのであって、平和市民を迫害しているのではない、とかといった嘘を、ウクライナの政治家やメディアは拡散している。彼らはこうした嘘を、それでなくてさえ朦朧としているウクライナ人の意識に、今度は学校の教科書を通じて植え付けようとしている。このような嘘の前には、たとえば、日本の歴史教科書における、たとえば南京大虐殺や朝鮮の従軍慰安婦に関する穏やかでない記述も蒼褪めてしまう。ではロシアは今、この侮辱的な攻撃に、どのように反応すべきか。ウクライナ人の若い世代が、ロシアに対する何の根拠も正当性もない憎悪を植え付けられようとしている。ロシアはどうしてこれを容認できるだろう。」
ウクライナのメディアや教科書における虚偽は極めて危険である。なぜならこの嘘は、ウクライナ人をロシアとの戦争に向けて準備するからである。今のところ西側はこの準備を静観している印象である。しかし、西側の承認とともにウクライナが開始するだろうロシアとの戦争は、欧州にも波及するのだということを悟るべき時ではないのか。戦争回避には一つの方法しかない。いまウクライナを統治しているのは「革命家」でも「民主派」でもない、嘘つきとナチスであると認めること。ウクライナの現政権を支持することは嘘つきやナチスと手を組むことと同じであると、理解することだ。