彼は、多くの通貨が使用される世界の構築を求め、半世紀以上に渡り存在する、米国の通貨ドルと米国の利益擁護のみを目的としたシステムを放棄すべきだと訴えた。
「中国、日本そして韓国は、すでにもう数年間、自由貿易ゾーン創設に関する交渉を行っており、そこでは、米ドルでなく、これら三国の通貨、つまり人民元・円・ウォンで決済が行われる事が見込まれている。しかし、こうしたプロジェクトの実現は、米国政府を恐らく喜ばせはしないだろう。それゆえ米国は、日本と韓国との関係を、軍事的政治的同盟国として、また中国抑止に向けたパートナーとして、これまで以上に密接にしようと試みている。米国は恐らく、そうする事で、日中及び日韓関係に不和をもたらし、ブレーキをかけ、そればかりか自由貿易ゾーン創設に関する交渉を失敗させようと期待している。でも今のところ、この交渉は続いている。さらに、相互決済の際ドルを使わないという考え方は、BRICS諸国にも広がり、上海協力機構では積極的にその実現が図られている。」
またロシア科学アカデミー極東研究所のアンドレイ・オストロフスキイ副所長は「東南アジア諸国が、ドルでなく人民元を貯めている」ことに着目し、ルーブルにも国際通貨になる可能性があると指摘している-
「通貨の力と言うのは、まず第一に、輸出量と商品の競争力によって決まる。ロシアはルーブルを強化できるだろうが、そのためには、ロシアの石油をルーブルで売らなければならない。我々のもとで石油をルーブルで買うようになれば、瞬時にルーブルは買い占められるだろう、そうすればルーブル・レートはすぐに上がる。しかし問題は、ロシア企業が今のところ、石油をルーブルで売るつもりがないという事だ。すでに5年前に私は、政府にエネルギー産品貿易においての決済をルーブルに移行するよう勧告を出した国際会議に出席した。しかしロシアの実業界は、今のところ、ルーブル決済での貿易に急ぎ移行するつもりはない。現在ロシアには、2つの会社グループがある。一つは、ルーブル決済に移行する用意があるグループで、そうする事でロシアの発展を促したいと考えている。そしてもう一つは、ドルあるいはユーロ決済で仕事をし、国外にお金を貯め込みたいと考えているグループだ。 」
多くの通貨を持った世界を作るべきだとするドヴォルコヴィチ副首相の発言が今なされたのは、決して偶然ではない。それは、ルーブル決済への移行に対するロシアのビジネスエリート達の否定的な態度を変えるため、一定の措置を講ずるとしたプーチン大統領の意向が明らかに反映したものと言えるだろう。