パノフ氏は、米国は安倍首相の口から対米戦への謝罪を期待しているとの見方を示している。しかもこれは中国との絡みで生じたものだというのだ。
「米国は対中関係の悪化を望んでいないと思う。これは第2次世界大戦に関する問題にも表れている。米国人の理解では、ロシアと喧嘩してしまったからには、ここでもし中国ともやり合うことになってしまったら、第2次大戦問題に関する論争では統一戦線と衝突せざるを得なくなる。
だが米国だって戦い、主に太平洋で50万人近くの人命を失っている。それに米国にだってブッシュ・シニアをはじめとする第2次大戦の戦争功労者らがまだ存命だ。このほか米国人の多くは未だに日本が大戦における自国の罪を誠実に認めようとしないことに大きな不満感を抱いている。米国は日本に対し、自国の罪を率直に認めるよう幾度もくりかえしてきた。それに毎日新聞にもジャパン・タイムズにも日本の首相に対し、謝罪を呼びかける記事が掲載されている。
単なる懺悔だけでは不十分だ。暴力をふるい、植民地化したことに対する責任を率直に認めねばならない。安倍首相はこれを考慮せざるを得ないだろうと思う。このため、先日の習国家主席との会談で安倍氏は状況を緩和させようとしたのだ。
今日本は、こないだのジャカルタでの安倍首相の発言で中国側は落ち着いたと思いこもうとしている。日本のマスコミは、万事良好、最悪の事態は過ぎた、日中関係は落ち着いていくだろうと確信を持って書いているが、私にしてみれば、こうした帰結は時期尚早だ。
安倍氏は結局のところ日本が暴力を振るったことへの責任を認めていない。今回、米議会での演説で首相はこのことにふれる可能性もあるのではないか? 今回の訪米で懺悔の演説を行わない場合、訪米の達成度はかなり下がるだろうことは明白だ。」
Q: 日中関係が改善された場合、米国が中国抑止政策において日本を利用することが難しくなるだろうか?
A: 米国はそんなことを危ぶんでいないと思う。
米国は中国と日本の良好な関係など演繹的にありえないという視点に立って物を考えている。これはなぜなら、日本がこの地域でなんらかの本質的な役割を演じることなど、自分こそが主たるプレーヤーだと思っている中国が許すはずがないからだ。
だが米国自身だって日本を抑止している。ついこないだも日本が中国の作ったアジアインフラ投資銀行に参加することを邪魔したではないか。米国がもっと賢ければ、逆に日本には銀行に参加して、多額の資金を投資させ、支配のシェアを多く占めるよう提案するところなのだが。だが米国人の戦略的思考はかなり限られているから仕方ない。
日本はこの銀行をめぐる戦いでは完全に敗北した。なぜなら、私の知る限りでは、日本は欧州はこれに参加しないだろうと高をくくり、欧州が加わらないなら、日本だって参加することなどないと思っていたからだ。ところが欧州は加わり、日本は負けてしまった。
ジャカルタでの習国家主席との会談で安倍首相は、日本は銀行経営がどう構築されるかを憂慮しているという発言を行ったが、これは賢明さを欠く、あまりシリアスではない立場だ。これらはすべて日本が2番手に収まるだろうことを物語っている。もちろん、日本は依然として抑制政策に参加し続けるだろう。
インド、豪州、フィリピンとの関係強化策も図られるだろうが、日本自体をコントロールするのはやはり米国であり、これが続けられる以上は日本は米国に頭痛の種を提供してはならないのだ。
米国は日本がしばしば正しくない行動をとることを理解している。今の第2次大戦をめぐる問題もその一例だ。日本は、より柔軟な政策を行い、過去の過ちを認めることで、アジア諸国関係でより多くを得られるはずなのだが。
Q: では安倍首相の訪米はどういった結果をもたらすだろうか?
A: 日本が今一番恐れているのは中国と米国が良好な関係になることだ。だから安倍氏は米国人の口から、日本こそが一番の親友で米国が日本を見捨てることは絶対にないよ、いつだって助けるから、日本は中国を怖がることはないよ、という確約を聞きたがっている。
これが聞きたくて安倍氏は議会に行くのだ。それに安倍氏は昔のことでつべこべ言われたくないと思っている。なんといっても日本人が戦った相手は主に米国人だったからだ。
だが米国にとっても日本の謝罪は非常に重要だ。特に安倍氏が日本のアジア侵略を裁いた東京裁判について、勝利者の行った不公平な裁判と発言したからには、さらに謝罪を聞きたいと思っている。この裁判は主に米国のものだった。だからこそ米国は、日本の首相が訪米で過去への完全な謝罪を行うことを望んでいる。
あぁ、かくなるうえは、この安倍首相の訪米は容易いものとはならないだろう。