噂は、フランス海軍のフリゲート艦「アコニト」と、ミストラル級強襲揚陸艦「ディズミュド」2隻が上海に寄港したことによって生じている。これが、今回の訪問の目的は、購入を決める前に艦船を詳細に調べる可能性を中国の軍人に提供することだ、とする憶測を生みだした。EUは1989年に中国への武器禁輸措置を導入しているため、艦船の取引は、法律上の障害に直面する可能性がある。一方で、この障害の力を誇張する必要はない。欧州理事会は、制裁の対象となる設備や技術のリストを作成せず、EU諸国は、自国のリストを採用した。フランスで採択された国の解釈では、主に致死兵器が制限対象となっている。ミストラル級強襲揚陸艦は、本格的な兵器は搭載しておらず、兵器なしで簡単に発注者へ納入することが可能だ。望むならば、輸送艦あるいは補助艦として分類することもできる。外国の発注者は、自ら簡単に兵器の補充や必要な設備を整えることができる。
もちろんフランスは売却するために、現行の契約でこの2隻を所有することになっているロシアとの問題を解決しなければならない。なお、ここでもそれほど大きな困難はみられない。現時点で、すでに公式的、そして最も高いレベルで、2011年になんらかの軍事的な必要性によってミストラル級2隻の購入契約が締結されたのではないことが認められている。ロシアがこの取引で望んでいたのは、フランスとの政治的関係を強化し、2008年のロシア・グルジア紛争におけるフランスの建設的な役割に感謝することだけだった。現在、取引の基盤に横たわる政治的配慮はない。また、経済危機と原油安の状況で、ロシアは今、ミストラル級のような「おもちゃ」どころではない。軍事予算は削減されており、欧州における西側との対立の中、陸軍、空軍、戦略兵器に注意が向けられている。フランスから12億ユーロの違約金を受け取ったり、巨額の維持費が必要なくなることなどは、ロシアにとって非常に有難いことだ。
なお中国がロシアのために建造されたミストラル級強襲揚陸艦を購入した場合、中国は、同国の艦隊にはなかった非常に近代的な強襲揚陸艦を所有することになる。米国や同国のアジアの同盟国は、このような取引に不満を抱くかもしれない。中国は、自国の沿岸から遠く離れた場所で上陸作戦を実施する可能性を著しく高めることになる。
米国はすでにフランスとロシアの取引を頓挫させるために著しい努力をした。その後で、再び中国とフランスの取引を失敗させるための力は、もう米国にはないかもしれない。