一方で先に、ナルィシキン議長は、日本の衆議院議長および参議院議長との会談で、ウクライナ問題や米国の圧力のもとで米国の同盟国が発動した対ロシア制裁について触れる見込みだと報じられた。日本は、ロシアの役人、クリミアの銀行や企業に対する制裁を発動したほか、ビザ制度の緩和を含めた複数の交渉プロセスを中断した。ロシアはこれらの行動に対処せずにはいられなかった。ロシアは日本人の南クリルへのビザなし渡航を凍結した。そして南クリルをめぐる領土問題に関するロシアの政治家や外交官の発言はトーンアップした。ロシアのラヴロフ外相は、ナルィシキン議長の訪日を前に「ロシア新聞」からのインタビューに答え、南クリルの領有権問題に関する日本との意見の相違の解決について、ロシアは日本に国連憲章を参照するようすすめていると述べた。ラヴロフ外相は、「私たちは常に日本側に問いかけている。『皆さん、貴方方は第二次世界大戦の結果を認めていますか?』と。彼らは、『全体としてはイエスです。ですがこの問題では、ノーです』と答える。『それではなぜ皆さんは当時、国連憲章を批准したのですか?そこには戦勝国が行ったことは全てゆるぎなく、無効にすることはできないと述べている第107条がありますよ』」と述べ、ラヴロフ外相は、日本は第二次世界大戦の結果に疑問を呈する唯一の国だと指摘した。
「私もそれを大変期待しています。去年、ウクライナをめぐるいろんな意見の対立が東西間で起き、日本はどちらかというとロシアに理解を示しながらも、しかしながら制裁をする立場でした。
これに対して今何よりも起きていることは、今年になって米露の対立を激しくさせないということで、欧州も日本も意見は一致しています。ミンスク合意をきちんと守るというプーチン大統領の発言はその意味で非常に前向きですし、米国もどこまでこれを利するか。
この問題の根っこにはやはり、ウクライナ問題について、我々が、特に西側があまりにも知らなさすぎたことがあります。あれだけ複雑な問題が国内にあったり、経済の崩壊があったりということを西側が知らなかったことも大きな原因であったということがわかったわけです。ですから今、米露が対立することがむしろマイナスになっており、和解の方向に進むことがグローバルな平和に役に立つのではないかと思うのですね。
その意味で、私もこれから出かけますが、ナルィシキン代表団の訪日にとても期待しています。」
下斗米氏の発言を、ロシアとの関係における現在の危機を克服すために、欧米はまずウクライナとクリミアに対するロシアの行動は動かしがたい理由によって説明できるものであることを理解する必要がある、と言い換えることができるのではないだろうか。そしてナルィシキン議長の訪日は、これらの理由を一番最初に理解し、米国を含む西側に、見習うべき良い見本を示すチャンスを日本に与える。