米軍欧州司令官ベン・ホッジス中将は、ウクライナの首都キエフで「米国の軍事教官によるウクライナ親衛隊員の訓練は、ウクライナ国民の安全に対する『投資』になるだろう」と述べた。ウクライナ親衛隊員というのは、もしご存じない方がいらしたらご説明するが、キエフ当局がウクライナ南部・東部(ドンバス地方)で展開している所謂「反テロ作戦」において、一般住民の殺害や、住宅地及び学校、幼稚園、病院などへの攻撃で悪名をはせている暴力集団である。そうした彼らは、自分の家や家族を守るために武器を手に立ち上がり戦っている義勇軍に歯が立たない。それゆえ、この内戦の期間中、彼らは2度も包囲されてしまい、何千人も非業の死を遂げ、何百人も捕虜となった。
そうした親衛隊員らの戦士としての資格不足を、今度は米国の軍事教官らが叩き直そうというわけだ。米国人には、すでにそうした経験がある。2000年代初め、彼らはグルジアの親衛隊員らを教育した。そして2008年8月には、教え子達が南オセチアの首都ツヒンヴァリに侵攻し、まず国際法に従って駐留していたロシアの平和維持軍を、続いて一般市民を銃撃した。しかし彼らは、オセチア人の要請でロシア連邦軍が入ると、米国製の最新兵器や武器を捨て退散した。
とはいえ「ウクライナの安全に対する米国の投資」の危険性については、過小評価してはならない。親衛隊や民族主義者、そして公然とナチズムを支持する輩は、ウクライナに多いからだ。けれども現在、この国のトップに立っているのは、あらゆるウクライナの災難の罪は、政府や議会を私する犯罪者や盗賊達ではなく、ロシアだと信じている人達である。米国の教官らがウクライナ親衛隊の教育訓練を終えた時、ウクライナ当局は、隊員らに自分達のコントロール下に戻り、ドンバスやクリミアで力を発揮するよう命令するに違いない。これは明らかに、ロシアとの戦争を意味する。そうした戦いにおいて、ウクライナが勝利得るチャンスはないが、ウクライナの全ての人々が米国人インストラクターのもとでそうした教育を受けるなら、キエフ当局が敗北するまで、多くの血が流れるだろう。血を流すのは、ウクライナ人であり、そしてロシア人である。米国人は、ウクライナに教官を送り込みながら、それがいったい何を意味しているか、非常に良く理解している。まして彼らは、恐らく、それを待望しているのだからなおさらである。