FIFAスキャンダルのターゲットは大衆。懐疑的、かつおびただしい数の大衆、サッカーファンは細かい状況には明るくなく、すべてをそのまま信じてしまう。彼らを怒り心頭させることのできる詳細を次々と出すことで、その注意を長期間そらす目的で放たれたものだ。
一般のヨーロッパ人の関心は欧州全体を盗聴する米国と独の間のスキャンダルに集中しているが、FIFAの一件は世界のリーダーにいたるまで、これから注意をそらすという単純な目論見だ。FIFAスキャンダルの開始まで、欧州の政治家らは、米連合国へのスパイ行為を許し、本質的には米国に欧州の主権を与えてしまうような首脳など、何のために必要だろうかという問題に頭を悩ませていた。
FIFAスキャンダルの背景で米ワシントン・ポスト紙に掲載されたある記事は特筆に価する。記事の執筆者は、何の権利があって米国人は欧州を切り回し、米国とは最小限度の関わりしかない国際組織の収賄に影響を及ぼそうとするのか、とたずねている。確かに米国はサッカー大国ではない。だが米国はいかなるスキャンダルにおいても国際プレーのあらゆるルールに違反してもゴールを決めようとする。