今回のサミットが異なったのは単にロシアのプーチン大統領がこれに参加していなかったことだけではない。ロシアと西側のパートナーとの間の軋轢はここ数年間、高まっていた。昨年2014年のサミットもクリミア問題のためにソチではなくブリュッセルで開催されたうえ、世界の先進国の会合へのロシアの参加権も一時中断された。これまで2012年に、プーチン大統領自身がサミット参加を退けたことがあった。これは米国キャンプデービッド・サミットで、その際の議長はオバマ大統領だったが、プーチン大統領は代理にメドヴェージェフ首相を送った。
ところがエルマウでの2015年のサミットで西側のパートナーが示したロシアの政策への非難、それへの受動的な拒否は質的に新たな段階、つまり積極的な対立へと移行した。そのトーンを決めたのはオバマ米大統領で、西側のパートナーらに向かい、ウクライナでのロシアの行為に「反撃せよ」という呼びかけからこのサミットを始めた。オバマ大統領とサミットのホスト役を務めたメルケル独首相の会談の結果、 対露制裁は続行されることが明らかにされた。それだけではない。サミットを総括して採択されたコミュニケでは、ドンバス紛争の緊張が増大した場合、対露制裁がさらに厳格化される恐れがあると明記された。 そしてロシアへの圧力は初めて、新たな線引きのイデオロギーの観点から説明された。米ホワイトハウスのアーネスト報道官の 声明がそれを物語っている。「G7とは共通の価値を掲げる民主主義国家のグループである。このため我々はこの価値の全世界への普及に断固として努めていく。」
価値観について、こうした米国側の解釈に断固として同意を示さないと主張したのはロシア上院(連邦会議)国際問題委員会のコンスタンチン・コサチョフ委員長だった。コサチョフ委員長はG7の総括にコメントしたなかで、「G7は価値を共有する共同体にはならず、なれなかった。これは美辞麗句のスローガンを越えるものではない。この形式の土台にあるのはより陳腐な関心だ。それはより強く、中心的存在であるために一緒にいようというものだ」と語っている。
これに対し、フョードル・シェロフ=コヴェヂャエフ元ロシア外務次官は別の視点からサミットの結果を評価している。「我々が目にしているのは神経戦だ。これに西側は敗北を帰している。この神経戦が図解されたのがバイエルンでのG7サミットだった。ロシアに圧力を講じながら、G7はロシア政権とその社会を交渉のできる状態に持っていこうとし、これによってクレムリンの路線を変更させようと必死だ。こうした立場は自己評価があまりに高すぎるため生じている。プーチン氏をロシアの首長として認めたくないという姿勢と、プーチン氏の政策に対立しようとする試みは逆の結果を招き、プーチン氏を取り巻くエリートと社会はこの先も力を結集していこうとしている。」
これに対し、ロシアは自分のほうからG8形式を復活させようとはしていないところを見せている。ロシア特別大使、BRICSにおけるロシアのシェルパで元G8ロシア首脳の個人代表(シェルパ)を務めた経験をもつヴァジム・ルコフ氏はコメルサント紙からのインタビューに対し、次のように語っている。
「一連のG7参加国の非難にも関わらず、ロシアはG7への参加を自ら求めたことは一度もなかった。ただの一度もない。これが我々の原則的な立場だ。
我々のパートナーがこのクラブから出たがゆえに、G8の機能を保障していたストラクチャーは存在できなくなった。
いくつかの方向性ではG8の枠組みで作られた作業メカニズムの活動は続けられている。たとえば内務省のラインでそうしたものがある。
これはみんなが理解していることと関係がある。つまりG8を葬った人々、そしてある一定の条件で実務的協力の続行を希望している人々はこんな、万人に悪いだけの協力関係などなくとも、この先も営みは続いていくことが分かっているということだ。」