しかし米国のオバマ大統領が、ドイツで開かれたG7サミット閉幕後に表した声明は、「米国とロシアが威嚇し合うことから対話へ移行するべきであることを米国が理解するには程遠い」ことを示した。週刊誌「The Nation」は、このように指摘している。
オバマ大統領は「ロシアがG7から『孤立』していることに喜びを表し」、欧州連合(EU)の制裁措置によって「ロシアが深刻な不況に陥った」ことに満足の意を表し、ロシアに対して「重大な追加制裁を科す」用意があると発表した。「The Nation」は、「オバマ大統領がサミットで表した声明は、『冷戦』時代のトーンと完全に一致していた」と指摘している。
「The Nation」によると、ソチで開かれた会談から、ドイツのエルマウ城が会場となったG7までの短い間に、声明のトーンが急に変わったのは、米国の「戦争派」が、この間に団結して、ケリー長官の外交に対して反撃に転じたからだという。ケリー長官が国会を訪れたその3日後に、米国のヌーランド国務次官補(欧州・ユーラシア担当)がウクライナの首都キエフを訪問した。そして同日、米国務省のラトケ報道官は、ケリー国務長官のソチでの会談内容を、ケリー氏自身が述べたものとは全く異なる性格に特徴付け、「最初からロシアがミンスク合意の義務を履行できないことは明白だった」と述べた。「The Nation」は、このように指摘している。
ヌーランド国務次官補のキエフ訪問は、沿ドニエストルの事実上の封鎖や、グルジアのサアカシビリ元大統領がウクライナ南部オデッサ州の知事に任命されるなど、ウクライナ政府側からの挑発的な行動を伴った。「The Nation」は、米国では「タカ派」がケリー長官に襲いかかったと指摘している。ケリー長官の訪問は「逆効果」であり、その行動はウクライナに関する米国の戦略を「明確にしなかった」との評価を受けたという。
「The Nation」によると、「戦争派」の行動には原則的に3つの目的があるという。それは、ソチにおけるケリー長官の外交努力を台無しにし、EUによる対ロ制裁の強化を支援し、「『ミンスク2』の心臓に杭を打ち込む」ことだという。これらはウクライナで新たな軍事行動が勃発する危険性を示している。
「The Nation」は最後に、「ウクライナを武装化する呼びかけが続くなかで制裁を強化することは、ウクライナ危機の平和的な解決に、あまり貢献しないだろう」と指摘している。