氏は次のように述べた。
米NSAがドイツに対し大規模諜報を行っていたことを示す「スノーデン・レポート」に対し、ドイツ政界は憤激した。憤激は真率なものであった。しかしそれも、今のところは、ただの空吹かしに終わっている。メルケル首相のイニシアチブで、米国と「対諜報」合意が結ばれようとしたが、いつの間にか頓挫してしまった。首相の電話通信の盗聴をめぐる捜査も、証拠不十分として、停止されてしまった。結局ドイツでは、通信の秘密というものは、事実上廃止されてしまったのであり、政府は、さらなる情報漏洩を防ぐための措置を何ら講じることなく、2年間を徒過した。その証拠に、先日、議会のコンピューターに攻撃が仕掛けられた。
ドイツにおいては、米国の国家安全保障局(NSA)と、英国の政府通信本部(GCHQ)が、諜報に従事している。ドイツ連邦情報局(BND)のゲルハルト・シンドラー長官によれば、それは、ドイツの諜報機関の活動が米国および英国の諜報機関に依存しているからである。
ところでドイツの防諜は今も、主に「東」志向である。誰の工作から国を守るかと言えば、昔ならソビエト、今ならロシアである。そのロシアの諜報員たちは、ドイツにおいて、米国の諜報員と比べ、常に、より慎重で、よりプロフェッショナルだった。それなのにドイツの特務機関は、習慣的に、米国にこそ、排他的な協力を求めてきたのである。
同盟諸国の諜報機関の活動のあり方から見れば、ドイツは今も「占領された国」なのである。
オーストリア連邦対テロ作戦・国家防衛庁の元長官、ゲルト・ポッリ氏は以上のように述べた。