同氏は次のように述べている。
米国に言わせれば、ロシアは、1987年にソ連と米国の首脳によって調印された、短・中距離ミサイル撤廃条約を蹂躙している。それへの報復上仕方なく、米国は自らの先制核攻撃システムを欧州諸国に配備するのだ、ということだ。
英国政府としては、ミサイルの受け入れを検討することそれ自体が、無分別で、挑発的なことだ。ミサイル受け入れへの同意は、冷戦終結前に発効した、ミサイル配備に対する禁止を、無効にしてしまう。
西側の高官たちは、虚偽情報と偏見によって、国際情勢を軍事的に緊張させている。米・英の政治家たちは、ロシアが「非対称的な軍事ドクトリン」を用いているだとか、ウクライナ紛争に関するミンスク合意を違反しているだとかと騒ぎ立て、ロシアに対するヒステリーを続けている。彼らは何も、確度の高い根拠など持っていないのである。マスメディアの婉曲語法を転用しているだけである。
米国も英国もNATOも、短・中距離ミサイル撤廃条約違反その他、「欧州諸国に脅威をもたらしている」ロシアのあらゆる行動について、ただひとつの有力な証拠も提出していない。
西側のリーダーたちの言葉と対照をなすのが、先日行われた、ウラジーミル・プーチン氏に対するイタリア紙コリエレ・デラ・セラのインタビューである。ロシア大統領は語った。「健全な理性を持っている人なら、この時代に大規模な軍事紛争を想像することなど出来ない」。そして、改めて、「ロシアは欧州の安全保障について最重要な問題、たとえばMD欧州配備について、いつでも対話に応じる用意がある」と強調した。ひるがえって、どうして米国や英国のリーダーたちは、世界情勢を解釈するに際し、「敵」「脅威」「侵略」というタームを使い続けるのだろう。
その答えは、西側の政治家らの、「冷酷な性格」に求められる。彼らはその性格によって、「共通の脅威」というイメージの背後に自らのヘゲモニー志向を隠し、自ら行う破壊的戦闘行為や侵略行為から注意をそらし、または責任を他に転嫁するのである。
米国のジャーナリスト、フィニアン・カニンゲム氏は以上のように記している。