「仮に安倍首相が沖縄に行かなかったら、沖縄市民は自分たちが見捨てられたと思っているため、自分たちの大きな悲劇を認識していないとして、安倍氏を散々非難しただろう。
沖縄上陸戦争は第2次世界戦争末期に行なわれ、県の一般市民の4分の1の命が失われた。沖縄が米国の軍事アピアレンスの主たる重荷を負わされている事実を沖縄県民はよしとはしていない。このため沖縄では非常に活発な抵抗運動が行なわれているのだ。
今沖縄の関心に注意が傾けられなければ、沖縄は日本から離脱するという話までささやかれているほどだ。これはもちろん極端な話だが、それが出てくるということは実際の根っこがあるからであり、こうした気運も存在している。
このため、沖縄は日本の切っても切り離せない重要な一部であることを示し、中央政府が沖縄問題に関与しており、沖縄が戦時中に払った多大な犠牲を忘れてはいないことを示すために、安倍氏は沖縄へと飛んだのだ。思うにこうするほか、安倍氏には手立てがなかっただろう。」
Q:沖縄市民の要求は普天間米軍基地を県外に移転するという具体的なものだが、これに米国側は異議を唱えている。安倍首相は妥協を提供できただろうか?
「安倍首相は何らかの新たなアイデアをいうつもりはなかったと思う。安倍氏は米国との間で基地の沖縄県外への移転を取り決めたではないか。だから何も目新しいことを言うつもりはなかっただろうし、首相の新たな発言が有るとも思われていなかった。
繰り返すが、安倍氏の主要な課題は沖縄市民に対し、あなた方の関心は考慮されますよ、ということを示すことにあったのだ。」
Q:普天間基地が沖縄県外に移転した場合、抵抗運動は止むことはない。安倍首相はこの状況からどのようにして脱却するだろうか?
A:「沖縄には米軍基地への不満感はまだある。だが別の見方をすれば、3-4年前にあったような大規模な反対運動やデモはもう見られない。おそらく市民もこの闘争に疲労したのだろう。政府も沖縄圏内での基地移設については米国との合意が達しており、その立場を強く押し出している。」
Q:沖縄県外への基地移転が実現化した場合、沖縄は米中対立が激化したときの標的になる。この危険性が意識さえることで沖縄の抵抗運動の活発化はありえるか?
A:「中国の沖縄攻撃が今、アクチュアルなテーマになるとは思わない。それに、日本の軍事政策の転換に絡んだ全体的な状況では、55年前、日米安保条約が結ばれたばかりの頃に見られたような米国との同盟に反対する大規模な抗議運動は起きていない。それよりも原発の稼動再開に対する様々な反対運動のほうが大きかった。日本の軍事政策への反対運動はそれほど大規模でもなく、決定的な性格を帯びているわけでもない。
Q:そうなると、成長する中国への恐怖から米軍基地のアピアレンスはすでに否定的なものではなく、逆に日本の安全の担保となっている。だが、純粋に客観的には米国との軍事同盟が強化されれば日本の安全レベルは高くなるのか、それともその逆か?
A:「この問いはなかなか回答しにくい。なぜなら日本は戦後70年の間米国との条約によって国の安全な発展を保証してきたからだ。
このほか、自国の安全を米国が保障してくれるだろうと信じ込み、日本は、自国の主権を制限する道に進んではいったものの、その代わりに巨額の資金を軍需には使わず、民間経済に投じる可能性を得、このことによって繁栄に成功してきた。
第2に日本は、以前は主たる脅威はソ連であるという観点に立脚していたが、それが今は中国に代わっている。だが中国からの脅威は米国との軍事同盟の強化によって対応されるだろう。こうした考え方は実際にある。
冷戦後、日本人はなぜ米国との軍事政治同盟が必要なのだという疑問を抱いたが、今は中国がこれから勃興し、脅威となるだろうという前提や、北朝鮮からの仮想的な危険性から日米の防衛協力条約は息を吹き返している状態だ。このプロセスの逆の好ましくない側面は、日本がアジアにおける米国政策の囚われの身になりつつあることだろう。米国のアジア政策の重要な要因は中国とのライバル競争および対立にある。つまり日本も中国との対立は避けては通れなくなる。