日本の議員達を受け入れた中国共産党の代表者の一人は、会談後「中日関係は、良い方向に向かいつつある」と述べた。中国側のこうした発言は、日本の議員達を喜ばせたに違いないが、ここ数年の日中関係の傾向を考えれば、オプチミズムの根拠は、そう多くはない。
モスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ上級研究員は、次のように述べている-
「2012年の尖閣諸島国有化以降、深刻に損なわれた中国との関係改善を目指したいという日本の意向は、十分評価されるもので、容易に説明できるものだ。中国と日本は、巨大な経済パートナー同士であり、おまけに隣り合っているからだ。隣国とは仲良くするほうがよいに決まっている。しかし日中関係改善の途上には、時の経過と共にますます深刻化してゆくいくつかの障害が存在している。
まずそれは、日本が、発展し積極化している中国の対外政策を恐れる余り、米国との軍事政治協力拡大に向けた一連の措置を取っているという点だ。中国は、日本の観点から見れば当然ともいえる措置を、反中国的なものとみなしている。なぜなら、アジア太平洋地域や世界における影響力増大を目指す米中間の競争が高まっているというのが、米国にとっての対中関係の基本要素だからだ。中国は、ワシントンが、日本政府への軍事政治的枷(かせ)を強めながら、中国との争いにおける基本的な同盟国として、まず日本を利用するのではないかと危惧している。
中国政府からすれば、ワシントンが日本を引き入れようと躍起になっているTPPも、やはり同じ目的に従うものだ。 日本と米国が、中国により設立されたアジア・インフラ投資銀行に加わるのを拒否した後、中国側では、日米は自分達に敵対する何かを企んでいるのではないかとの疑いが強まっている。
それゆえ、『日中関係は改善されつつある』との中国共産党幹部の威勢のいい声明を、誰も、特に日本人は、誤解してはならない。喜んだり誘惑されたりする代わりに、日本人のすべきことは、ライバルではなくパートナー関係を、中国との間に築きたいとの断固とした意向を示す何か現実的措置を講ずることだ。しかし日本には、世界における一極支配の夢を捨て切れず、中国の台頭を許さない米国に対する義務が存在する。つまり日本は、米国の反中国政策の人質に今後もなり続けるだろうということだ。それゆえ中国との関係改善のチャンスは、近い将来で言えば、ゼロに等しいと言わなければならない。」