何が望みなのか、たしかに、分かりにくい。おそらく、それが必要なのは、せめてこのひとつの問題について、ロシアを屈服させ、クレムリンに対し命令を行い、ただのエピソードに過ぎないとしても、外部からの強制によって、ロシアに一定の仕事を行わせるためなのだろう。あらかじめ失敗含みのアイデアだが、ロシアをおちょくることが、一部西側の戦略家らにとっては、死中に活なのである。
EU内部のある情報筋によれば、もしもクリミア住民投票がもう一度、今度はOSCEの監視の下で行われるのであれば、欧州は結果を考慮する用意がある、という。その「考慮」の末に、対ロ制裁が見直される可能性さえあるという。一方、オーストリアのセバスチャン・クルツ外相は、こうした情報を否定し、EUはクリミア住民投票のやり直しを検討してはいない、という。一体にオーストリアは、ロシアやウクライナ危機に対し、西欧諸国の例に似ず、抑制的な立場をとっている。そのことが外相発言で再び示された形だ。といっても、明々白々な事実を認めたに過ぎないのであるが。一方、駐ロシアEU代表部報道官ソレン・リボリウス氏は、強硬な発言を行っている。EUの立場は不変であり、クリミア併合は認められず、ウクライナの領土一体性は尊重されるべきだ、とリボリウス氏。
ロシア側は、これまで度々、クリミア住民投票は国際法ならびに国連憲章に則って行われた、と主張している。本質的に、この点については西側にも反論すべきことはないのである。なお、冴えた社会学者なら誰でも、クリミア市民は今また投票したとしても同じ結果を出すだろうし、ロシア大統領への支持、ロシアへの編入の決定への支持は依然として莫大である、と語っている。しかしながら、ロシアには、問われる問題のいかんによらず、毎四半期、毎年のように住民投票を行う慣行はない。
たとえロシアが住民投票の再実施に同意したとしても、それには何の意味もない。現代の世界で西側の政治家らの言葉を信じることは、少なくとも軽率、言ってしまえば、あまり賢いとは言えないことである。今日こう言ったと思えば、明日はああ言う、明後日はまた別のことを言う。NATOを東方に、ロシアとの国境に近く拡大しはしない、と言ったかと思えば、全く逆のことをする。今もそうだ。新規住民投票について語りながら、西側の戦略家たちは、明らかに、ロシアをさらなる罠にかけようとしている。しかしクリミアの民衆は、2014年の春、この上なく明らかに立場を表明したのである。その投票をやり直すということは、クリミア市民の意思を尊重しないことを意味する。そんなことは、もちろん、誰もしないだろう。クリミア市民の立場に耳を傾けない者は、空虚な言葉で大気を震わすかわりに、自らの聴覚問題を解決するべきなのだ。