谷内局長は、国際的な秩序を保つため法の支配の重要性を強調し、ロシアによるクリミア併合は認められないとする日本の立場を確認するとともに、散発的に戦闘が続くウクライナ東部での停戦に向けて、ロシアが建設的な役割を果たし、プーチン大統領の訪日に向けた環境整備をはかるよう求めたとみられる。
では実際のところ、谷内局長が言う「環境整備」の諸条件とは何だろうか? この問いを、ラジオ・スプートニク記者は、モスクワにある米国カナダ研究所の主任研究員で元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏にぶつけてみたー
「このことを判断するのは難しい。しかしもし日本が対ロシア制裁をやめるということなら、素晴らしいことだ。でも日本が西側との連帯に忠実である以上、それは信じがたい。それ以外に谷内氏は『日本はクリミア併合を認めていない』と述べた。すなわち、ここでの立場は変わっていないということだ。もし何らかの経済協力について言っているのであれば、これについてもまず制裁を解除する必要がある。なぜなら経済協力は、かなりの程度、資金の流れと結びついているからで、現在日本の銀行を通じての資金の流れは止まっている。それ以上、どういうことを言っているのだろうか? 領土問題に関する日本の立場が変化したというのだろうか? そのことも信じがたい。ただ何か小さな変化、余り本質的でない提案はあり得る。例えば、軍人同士の間のコンタクトの再開だ。モスクワで谷内局長は、そもそもモスクワでの交渉を一般論で片付け、何も提案しなかった、ということも考えられる。」
次にスプートニク記者は、パノフ元大使に、今年のプーチン大統領の訪日が必要かどうか、ロシアの見方を聞いた-
「プーチン大統領が以前に述べたように、ボールは日本の側にある。我々は、日本側が出してくる提案を待っている。ロシア側からは『制裁を解除する』といったタイプのいかなる提案もないし、今後もないだろう。我々は、制裁を導入したのはロシアではなく、ゆえにそれらを解除するのも我々ではないと言っている。それは日本が行うべきものだ。何らかの経済的プロジェクトについて言えば、それについて私は聞いていない。我々は、例えばエネルギー・ブリッジを提案したし、ガス・パイプラインや原子力エネルギー分野での建設プロジェクトなどを示したが、今のところこれらの事は話し合われているか、あるいはストップしている。」
最後にラジオ・スプートニク記者は、パノフ元大使に「もしロシアが、日本が歩み寄っていないと感じているなら、ロシアは今年のプーチン大統領の訪日を断る可能性はあるのかどうか」聞いてみたー
「あらゆることがあり得る。恐らくトルコでのG20サミットではプーチン・安倍会談が計画されるのではないか。その時、プーチン大統領の日本訪問について具体的に決まると思っている。」