東京財団・畔蒜氏(2)「ロシアは日本側からの交渉プロセスの再開を待っていた」

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ロシアは日本側からの交渉プロセスの再開を待っていた - Sputnik 日本
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ウクライナ問題を理由に無期延期されたと思われた岸田外務大臣のロシア訪問がより一層現実味を帯びてきた。既に外務省の林欧州局長と国家安全保障局の谷内局長はそれぞれモスクワを訪問し、準備が着々と整えられている。岸田外相の訪ロは、プーチン大統領を日本に呼ぶための大変重要なステップである。東京財団研究員で露ヴァルダイ会議の常連でもある、畔蒜泰助(あびる・たいすけ)氏に今後の見通しを伺った。

Q、6月末のNHKの報道によれば、安倍首相はプーチン大統領に電話会談で、岸田外務大臣を8月末から9月初旬にロシアに派遣すると伝えた、とのことです。その前段としてプーチン大統領は6月19日の外国通信社幹部との会見にて、領土問題を念頭に「全ての問題は解決可能である」とする一方で「ロシアだけでは何も解決できない。日本側の動きを待っている」とも発言しました。つまり、日本が新しい提案をすべきだと示唆したと思われます。このような状況で、岸田外相はロシアに対して何を提案できるでしょうか。

畔蒜泰助氏 - Sputnik 日本
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A、ロシアからしてみれば、日本側が岸田外相の訪ロのプロセスを前に進めないということで、それによって事実上プーチン大統領の訪日の日程も決まらないという状況がずっと続いていました。このプロセスを再開しないことには何も始まらないと、ロシアは示唆しているのでしょう。

そもそも岸田外相の訪ロの目的は二つあって、一つはプーチン大統領の訪日に向けた日程調整、もう一つはプーチン大統領が訪日した際の経済協力案件について話すことです。そのための貿易経済に関する日ロ政府間委員会を開催予定だということです。日ロの経済協力案件、具体的には農業・医療・都市開発などのうち、プーチン大統領訪日時にサインできるのはどの案件か?ということを確認する場です。そしてこの岸田外相訪ロの後に、日ロ次官級の協議を行う予定です。領土問題はここで議論されるでしょう。更に11月にトルコで行われるG20サミットの際にプーチン大統領と安倍首相が首脳会談を行うと言われており、今両国の当局者の間で調整されています。ここでも更に様々な問題について議論されるはずです。このような日程を考えると、もしかすると年内のプーチン大統領の訪日というのは間に合わないかもしれません。しかしそれでも、領土問題も含めて、やっと交渉を再開するプロセスに入ってきたと言えるでしょう。

ただし今回のプーチン大統領の訪日で領土問題に具体的な進展が見られるか?ということに対して私は慎重な見方をしています。なぜならウクライナ問題にからんだ対ロ経済制裁があるからです。日本の経済制裁は欧米のそれと比べると、ロシア実体経済にほとんど影響がないものです。とはいえ、欧米が制裁を維持している限り、日本だけが解除をするというのは考えにくいです。とすれば、領土問題の大きな進展という期待はなかなかできないだろうと思います。それでも将来に向けた環境整備という意味においては、今回のプーチン大統領訪日は大変重要な意味があります。

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