決議案は英国が米国と共に作成。決議案は賛成10票を集めたものの、ロシアは国連常任理事国の権利として拒否権を発動した。このほか他の常任理事国である中国とベネズエラ、アンゴラ、ナイジェリアの4国が棄権している。
ロシア外務省はこの後、同省のサイトに発表した公式声明でロシアの立場を説明した。
「文書は、政治的な動機付けがなされており、バランスに欠け、ボスニア・ヘルツェゴビナおよびバルカン半島の民族和解のプロセスにとっては破滅的な性格であることから、提出された形では受け入れ難い。
事件の罪は、セルビア人自身もこの悲劇の犠牲者となった事実を考慮されずに、事実上、例外なくセルビア側にあるとされている。」
「ロシアは起きた犯罪の事実を全く否定はしないものの、当時のおびただしい数の軍事犯罪のひとつだけを、他を忘れて取り上げることは絶対に合法的ではなく、ボスニア社会の分裂を深刻化させるのみだと捉える。」
セルビアのトミスラフ・ニコリチ大統領はセレブレニツァに関する決議案にロシアが拒否権を発動したことを高く評価し、ロシアによってこうした決定が採られた日を国の偉大な記念日と呼んだ。ニコリチ大統領は「全セルビア国民に烙印が押されることが防がれた」と語った。
1995年7月11日、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争が頂点に達したことを受け、国連は「安全保障ゾーン」を宣言したため、ムラディチ将軍の率いるボスニア系セルビア人の軍部隊が国連が「安全保障ゾーン」を宣言した地帯を占領。国連の発表によれば、ムラディチの軍はおよそ8000人の武器を持たないムスリムを殺害した。セルブレニツァには当時オランダが派兵した国連保護軍が駐屯していたものの、虐殺を防ぐことはできなかった。2007年、国際司法裁判所はこの事件をムスリムに対する大虐殺として認めた。