マレー機墜落後、キエフ当局は、例によって義勇軍を非難し「マレー機は、彼らがロシアから受け取った(そのようにキエフ当局が考える)地対空ミサイル・システム『ブーク』によって撃墜されたのだ」と主張した。一方ロシア政府は、そうした主張を退け、又ドンバスの義勇軍は「自分達には『ブーク』などないばかりか、それを扱える戦闘員もいない」と説明した。
悲劇が起きてから最初の数ヶ月は、全くそのとおりだと思わせるものから完全に現実とは違っていると思えるものまで、非常にたくさんの説が出された。そうした中で、国際航空委員会の専門家達は、事故現場に急ごうとはせず、誰も墜落したマレー機の破片を集めようとしなかった。ドネツク人民共和国指導部は、国際社会の側からの事故調査への関心が低いことをずっと指摘し続けてきた。
ジャーナリスト達が、そうした情報を進んで公表したことは、何も驚くべきことではない。なぜなら彼らにとって、多くの人たちが知らない事実の数々を手にすることは、プロとしての目的だからだ。ただ別の問いが生まれる「誰が、そして肝心なことは何のために、これまで関係者だけしかアクセスを許されなかったような情報を流したのか?」という疑問だ。
航空安全問題の専門家で、以前国際航空委員会のメンバーだったワレンチン・ドゥヂン氏は「あれやこれやの『極秘情報』がジャーナリストに漏らされるのは、圧倒的多数の場合、何らかの明確な目的を持ってなされる。そうした中でも、最も多いのが、委員会が下そうと考えているあれやこれやの結論に対し 世論を前もって用意させる、慣れさせるためだ。恐らく、マレー機墜落事故の原因究明についての情報が開示される場合もまさにそうなっているようだ」と指摘している。
「マスコミへの『情報漏えい』は、第一に、それを最も幅広く拡散させたいと期待する場合、そして第2に、それがたとえ全くのウソであっても、拡散される情報へ最も多くの信頼を集めたいと望む時、組織される。そうした例は少なくない。最も典型的な例が、イラクだ。イラクのサダム・フセイン政権が大量破壊兵器を保有していると人々を納得させようと試みた例だ。結果は、ご存知のとおり、米国及び英国軍によるイラク侵攻である。サダム・フセイン体制は打倒され、国内では血で血を洗う内戦が始まった。それは、現在も続いている。しかしイラクでは化学兵器も細菌兵器も核兵器も見つからなかった。最終的に、米国と反イラク連合国も、その事実を公式に認めることを余儀なくされた。」
目的は、必ずしも手段を正当化しない。しかし目的が、ウクライナ上空で撃墜された民間航空機事件の権威ある客観的で公正な調査であり、真にその事件に責任のある人々を特定することにあるのであれば、何のために、又なぜそうした方法をとるのだろうか?